人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「クラウドだって、普段殿下と呼んでいるではありませんか。対外的にも、殿下の方が良いかと」
名前で呼んでしまったら、この人は私のモノだなんて性懲りもなくまた子どもみたいな夢をみてしまう。それは、アリアにとって、悪夢でしかない。
「もう、お眠りください。夜は短いのですから」
話を切り上げるようにアリアはそう告げて、名前を呼ぶ代わりにそっと優しくロイの髪を撫で始めた。
部屋にようやく沈黙が訪れて、しばしロイは目を閉じる。
連日の疲れとすぐそばに感じるアリアの温もりと頭を撫でられることの心地よさで、ロイはついうとうとしはじめる。
「クラウドだって、プライベートでは名前で呼ぶ」
寝たらアリアが帰ってしまうなと、もう少し引き留めたくなったロイは眠さに抗ってそんな事を口にする。
「……私は、クラウドが羨ましいです」
静かにでも心地よい声がロイの耳に届く。
「私も妻じゃなくて殿下と友達だったら、名前で呼べたかも……しれません」
友達。
アリアの口から出たそんな単語が耳に届いて、ロイは働かなくなりつつある頭のまま目を開けてアリアの方を見る。
「アリア、俺は男女間の純粋な友情は信じてない。利害関係があれば別だけど」
「そういうものですか?」
眠そうな琥珀色の瞳は、ゆっくり瞬きアリアを見つめる。
「友達は膝枕してくれないだろ」
「膝枕こだわりますね」
ロイは頭を撫でていたアリアの手を掴むと、アリアに見せるようにアリアの手の平にちゅっと音を立ててキスをする。
いきなりのことにびっくりし、淡いピンク色の瞳を瞬かせるアリアを見ながら、その手にロイは自分の指を絡めて、今度は手の甲にキスをする。
「こういう事もできないだろ?」
「いや……うーん、社交的な挨拶ならかろうじて……あり?」
動揺を悟られなくないアリアがそういうと、ふむと頷いたロイが気だるそうに身体を起こす。
「もう、殿下寝てくださいって。さっきまでうとうとしてたじゃないですか」
一体どうしたのとアリアが言いかけたところで、ロイは無言のままぎゅっとアリアを抱きしめる。
「ちょ、殿下?」
そのまま少し身体を離したかと思うと、アリアの髪や額、耳にキスをする。
「俺はアリアと友達にはなれない」
そう囁いたロイは、真っ赤になっているアリアの事をトロンとした目で見て笑う。
近づいて来たロイにアリアが思わず目を閉じたところで、ほんの一瞬唇に何かが触れた。
が、次の瞬間にはそんな感覚はなくなり、膝に重みを感じる。
目を開けたアリアの視界に入ったのは、力尽きて膝の上で爆睡しているロイの姿だった。
「えっと、これは……盛大に寝ぼけていたということかしら?」
そんなアリアの問いかけに答えることはなく、規則正しい寝息が聞こえる。
アリアはそっと自分の唇に指を当てる。
触れたか、触れてないか本当に微かな感触だった。
「事故……かな。うん、セーフ?」
危なかった、と思う一方でできたらもう少し早く寝落ちして欲しかったとアリアはロイが覚えていない事を祈る。
「コレ、どうしたらいいの?」
力尽きて眠るロイにガッツリホールドされている上、抜け出したら起こしてしまいそうでアリアは動くことを躊躇う。
「まぁ、こんな寝づらそうな体勢すぐ起きるわよね」
ううっとまだ引かない熱に小さくうめいたアリアは、そっとロイの髪を撫でて、
「まぁ、とりあえずお疲れ様。おやすみなさい、ロイ様」
小さな声でそう言って笑った。
名前で呼んでしまったら、この人は私のモノだなんて性懲りもなくまた子どもみたいな夢をみてしまう。それは、アリアにとって、悪夢でしかない。
「もう、お眠りください。夜は短いのですから」
話を切り上げるようにアリアはそう告げて、名前を呼ぶ代わりにそっと優しくロイの髪を撫で始めた。
部屋にようやく沈黙が訪れて、しばしロイは目を閉じる。
連日の疲れとすぐそばに感じるアリアの温もりと頭を撫でられることの心地よさで、ロイはついうとうとしはじめる。
「クラウドだって、プライベートでは名前で呼ぶ」
寝たらアリアが帰ってしまうなと、もう少し引き留めたくなったロイは眠さに抗ってそんな事を口にする。
「……私は、クラウドが羨ましいです」
静かにでも心地よい声がロイの耳に届く。
「私も妻じゃなくて殿下と友達だったら、名前で呼べたかも……しれません」
友達。
アリアの口から出たそんな単語が耳に届いて、ロイは働かなくなりつつある頭のまま目を開けてアリアの方を見る。
「アリア、俺は男女間の純粋な友情は信じてない。利害関係があれば別だけど」
「そういうものですか?」
眠そうな琥珀色の瞳は、ゆっくり瞬きアリアを見つめる。
「友達は膝枕してくれないだろ」
「膝枕こだわりますね」
ロイは頭を撫でていたアリアの手を掴むと、アリアに見せるようにアリアの手の平にちゅっと音を立ててキスをする。
いきなりのことにびっくりし、淡いピンク色の瞳を瞬かせるアリアを見ながら、その手にロイは自分の指を絡めて、今度は手の甲にキスをする。
「こういう事もできないだろ?」
「いや……うーん、社交的な挨拶ならかろうじて……あり?」
動揺を悟られなくないアリアがそういうと、ふむと頷いたロイが気だるそうに身体を起こす。
「もう、殿下寝てくださいって。さっきまでうとうとしてたじゃないですか」
一体どうしたのとアリアが言いかけたところで、ロイは無言のままぎゅっとアリアを抱きしめる。
「ちょ、殿下?」
そのまま少し身体を離したかと思うと、アリアの髪や額、耳にキスをする。
「俺はアリアと友達にはなれない」
そう囁いたロイは、真っ赤になっているアリアの事をトロンとした目で見て笑う。
近づいて来たロイにアリアが思わず目を閉じたところで、ほんの一瞬唇に何かが触れた。
が、次の瞬間にはそんな感覚はなくなり、膝に重みを感じる。
目を開けたアリアの視界に入ったのは、力尽きて膝の上で爆睡しているロイの姿だった。
「えっと、これは……盛大に寝ぼけていたということかしら?」
そんなアリアの問いかけに答えることはなく、規則正しい寝息が聞こえる。
アリアはそっと自分の唇に指を当てる。
触れたか、触れてないか本当に微かな感触だった。
「事故……かな。うん、セーフ?」
危なかった、と思う一方でできたらもう少し早く寝落ちして欲しかったとアリアはロイが覚えていない事を祈る。
「コレ、どうしたらいいの?」
力尽きて眠るロイにガッツリホールドされている上、抜け出したら起こしてしまいそうでアリアは動くことを躊躇う。
「まぁ、こんな寝づらそうな体勢すぐ起きるわよね」
ううっとまだ引かない熱に小さくうめいたアリアは、そっとロイの髪を撫でて、
「まぁ、とりあえずお疲れ様。おやすみなさい、ロイ様」
小さな声でそう言って笑った。