人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「……なんだ、つまんないの。アリアがその気なら一緒にキルリアに帰ろうと思ってたのに」
アリアは驚いた顔をして、空色の瞳をじっと見る。
「あの皇太子のことが嫌になったら、いつでも、なんなら今すぐでも、キルリアに帰ってきていいからね。可愛いアリアのためなら、戦争起こしてでもなんとかしてくれるって、ルシェ兄さんが」
アレクの言葉にふふっと笑ったアリアは、
「戦争はダメです。それに、ルシェお兄様に投げちゃダメですよ」
アレクお兄様はなんとかしてくれないの? とアリアは楽しそうに尋ねる。
「僕は研究者だもん。国のあれこれは兄さんにお任せ〜」
クスクスッと笑ったアレクは、
「でもね、本当にそう思ってるから。いつでも帰っておいで」
と優しくアリアにそう言った。
いざという時は味方になってくれる人がこの世界にいる。
それだけで、アリアはもう少し頑張れそうな気がした。
「分かりました。もう無理ってなったら全部放り出して国に帰ります」
クスッと笑ったアリアは、
「だから、もう少しだけ。運命とやらを待ってみたいと思うのです」
大剣の形をとる荊姫をまるでバトンでも回すような軽さでクルクルと回しながらそう言った。
変わってしまったこの物語の結末がどこに向かっているのか、もう少しロイの側で見てみようと思う。
きっと、いざとなれば物語からの退場の方法はいくらでもあるのだから。
「それにしてもよくそんな大きな剣を軽々とブン回せるよね」
アリアの不思議な色合いに煌めく黄昏時の至宝を眺めながら、アレクはそう話しかける。
アレクもアリアと同じ黄昏時の至宝を継承しているが、かなり疲れるので滅多に使わない。
「そう、不思議なことにとても軽いのです。帝国で荊姫を解放してから、ずっと」
パシッとアリアは荊姫を手に取って、アレクの言葉に頷く。
以前使っていた時はもう少し重みがあったような気がするのに、狩猟大会で解放して以降、荊姫は驚くほどに手に馴染み、アリアの思った通りに動くのだ。
まるで荊姫は自分の身体の一部なのではないかと思うほどに、魔剣の感情さえも流れ込んでくる。
「ねぇ、アリア。もう少し詳しく見せてくれる?」
とアレクは自身の黄昏時の至宝を発動させ、アリアにそう尋ねる。
「それは構いませんが。珍しいですね、お兄様がその目を使われるなんて」
普段滅多なことでは黄昏時の至宝を発動させないアレクに首を傾げつつ、アリアは了承する。
「アリア、もう一度荊姫を使って見て。僕はアリアと違ってこの目あんまり持たないからなる早で」
とアレクはアリアに要求する。
アリアは軽く頷くと、その場で荊姫を構え闇夜を切り裂く。
アリアのイメージに応えるように、軽やかに空を斬った荊姫は、数メートル先の木の枝を落とした。
「今は枝を落としましたが、その気になれば木本体も薙ぎ払えます」
斬りたいと思った対象の斬りたい箇所だけを的確に落とせる。それも以前より格段に正確に。
もちろん訓練を積んでいるというのもあるのだが、それ以上に荊姫がアリアに応えたいと力を貸してくれているような気がする。
それは本当に不思議な感覚だった。
アリアは驚いた顔をして、空色の瞳をじっと見る。
「あの皇太子のことが嫌になったら、いつでも、なんなら今すぐでも、キルリアに帰ってきていいからね。可愛いアリアのためなら、戦争起こしてでもなんとかしてくれるって、ルシェ兄さんが」
アレクの言葉にふふっと笑ったアリアは、
「戦争はダメです。それに、ルシェお兄様に投げちゃダメですよ」
アレクお兄様はなんとかしてくれないの? とアリアは楽しそうに尋ねる。
「僕は研究者だもん。国のあれこれは兄さんにお任せ〜」
クスクスッと笑ったアレクは、
「でもね、本当にそう思ってるから。いつでも帰っておいで」
と優しくアリアにそう言った。
いざという時は味方になってくれる人がこの世界にいる。
それだけで、アリアはもう少し頑張れそうな気がした。
「分かりました。もう無理ってなったら全部放り出して国に帰ります」
クスッと笑ったアリアは、
「だから、もう少しだけ。運命とやらを待ってみたいと思うのです」
大剣の形をとる荊姫をまるでバトンでも回すような軽さでクルクルと回しながらそう言った。
変わってしまったこの物語の結末がどこに向かっているのか、もう少しロイの側で見てみようと思う。
きっと、いざとなれば物語からの退場の方法はいくらでもあるのだから。
「それにしてもよくそんな大きな剣を軽々とブン回せるよね」
アリアの不思議な色合いに煌めく黄昏時の至宝を眺めながら、アレクはそう話しかける。
アレクもアリアと同じ黄昏時の至宝を継承しているが、かなり疲れるので滅多に使わない。
「そう、不思議なことにとても軽いのです。帝国で荊姫を解放してから、ずっと」
パシッとアリアは荊姫を手に取って、アレクの言葉に頷く。
以前使っていた時はもう少し重みがあったような気がするのに、狩猟大会で解放して以降、荊姫は驚くほどに手に馴染み、アリアの思った通りに動くのだ。
まるで荊姫は自分の身体の一部なのではないかと思うほどに、魔剣の感情さえも流れ込んでくる。
「ねぇ、アリア。もう少し詳しく見せてくれる?」
とアレクは自身の黄昏時の至宝を発動させ、アリアにそう尋ねる。
「それは構いませんが。珍しいですね、お兄様がその目を使われるなんて」
普段滅多なことでは黄昏時の至宝を発動させないアレクに首を傾げつつ、アリアは了承する。
「アリア、もう一度荊姫を使って見て。僕はアリアと違ってこの目あんまり持たないからなる早で」
とアレクはアリアに要求する。
アリアは軽く頷くと、その場で荊姫を構え闇夜を切り裂く。
アリアのイメージに応えるように、軽やかに空を斬った荊姫は、数メートル先の木の枝を落とした。
「今は枝を落としましたが、その気になれば木本体も薙ぎ払えます」
斬りたいと思った対象の斬りたい箇所だけを的確に落とせる。それも以前より格段に正確に。
もちろん訓練を積んでいるというのもあるのだが、それ以上に荊姫がアリアに応えたいと力を貸してくれているような気がする。
それは本当に不思議な感覚だった。