人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「見覚えのないアクセサリーと靴? 髪飾りまで。いつ増えたのかしら?」
はて、アクアプールに出立する前にはなかったはずだけどと思いながら、アリアは働かない頭でそれらを眺める。
ふと、下に落ちているぐしゃぐしゃになった紙を見つけた。
何気なくそれを拾って広げてみれば、そこには見覚えのある筆跡でアレクの名前が入っていた。
「…………私に直接、言ってくれたら良かったのに」
それは、離縁状だった。
「アレクお兄様の手を煩わせなくったって、あなたが望むなら素直に書いたのに」
アリアはクローゼットを眺める。
知らない間に増えた中身と離縁状。
つまりこれは。
「別に、手切金もいらなかったのに」
離縁に対する慰謝料なのだろうとアリアは解釈する。
「展開、はやっ」
とアリアは苦笑しながら、ぐしゃぐしゃになった離縁状を伸ばす。
「でも、ロイ様らしい。決断が早いのは、いい事だわ」
どうやら寝ている間に彼と彼女の物語は順調に進んでいるようで、悪役姫は退場秒読みらしいと悟る。
フレデリカを通じて、ウィーリアとの伝手もでき、アレクとの繋がりで魔獣対策も万全だろう。
その上時渡りの乙女である聖女が異世界転移してきたのだ。
これで、瘴気の浄化も問題なく終息できるだろう。
全て収まるところに落ち着いて、悪役姫の役目はもうないのだ。
「処刑を回避して、離縁になっただけマシね。予定通り!」
アリアはワザと明るく自分に言い聞かせ、ペンを探す。
「あとは、私がこの物語から退場するだけね」
ペンを握り、アリアは名前を綴る。
「……こんな風に置いておくならせめて、先に自分の欄記入しときなさいよ」
そう文句を言って書き終えた瞬間、涙がこぼれて、文字が滲んだ。
アリアは丁寧に離縁状を折り畳み、一旦クローゼットに仕舞った。
軽くノックの音がして戸が静かに開く。目があった人物が息を呑み、そして足早に抱きついてきた。
「姫様! ああ、姫様っ!!」
「マリー心配かけたみたいでごめんね」
アリアは抱き止めてマリーに笑いかける。マリーがここまで取り乱すのなんて、指折りしかないのでかなり心配させたのだと察する。
「お身体にどこかご不調は? 起き上がって大丈夫なのですか?」
「んー身体が怠いわね。とりあえず、湯浴みと着替え、あと軽く何か食べたいわ」
話はそれからゆっくりしましょうとアリアはいつも通りの口調でマリーに大丈夫と笑った。
はて、アクアプールに出立する前にはなかったはずだけどと思いながら、アリアは働かない頭でそれらを眺める。
ふと、下に落ちているぐしゃぐしゃになった紙を見つけた。
何気なくそれを拾って広げてみれば、そこには見覚えのある筆跡でアレクの名前が入っていた。
「…………私に直接、言ってくれたら良かったのに」
それは、離縁状だった。
「アレクお兄様の手を煩わせなくったって、あなたが望むなら素直に書いたのに」
アリアはクローゼットを眺める。
知らない間に増えた中身と離縁状。
つまりこれは。
「別に、手切金もいらなかったのに」
離縁に対する慰謝料なのだろうとアリアは解釈する。
「展開、はやっ」
とアリアは苦笑しながら、ぐしゃぐしゃになった離縁状を伸ばす。
「でも、ロイ様らしい。決断が早いのは、いい事だわ」
どうやら寝ている間に彼と彼女の物語は順調に進んでいるようで、悪役姫は退場秒読みらしいと悟る。
フレデリカを通じて、ウィーリアとの伝手もでき、アレクとの繋がりで魔獣対策も万全だろう。
その上時渡りの乙女である聖女が異世界転移してきたのだ。
これで、瘴気の浄化も問題なく終息できるだろう。
全て収まるところに落ち着いて、悪役姫の役目はもうないのだ。
「処刑を回避して、離縁になっただけマシね。予定通り!」
アリアはワザと明るく自分に言い聞かせ、ペンを探す。
「あとは、私がこの物語から退場するだけね」
ペンを握り、アリアは名前を綴る。
「……こんな風に置いておくならせめて、先に自分の欄記入しときなさいよ」
そう文句を言って書き終えた瞬間、涙がこぼれて、文字が滲んだ。
アリアは丁寧に離縁状を折り畳み、一旦クローゼットに仕舞った。
軽くノックの音がして戸が静かに開く。目があった人物が息を呑み、そして足早に抱きついてきた。
「姫様! ああ、姫様っ!!」
「マリー心配かけたみたいでごめんね」
アリアは抱き止めてマリーに笑いかける。マリーがここまで取り乱すのなんて、指折りしかないのでかなり心配させたのだと察する。
「お身体にどこかご不調は? 起き上がって大丈夫なのですか?」
「んー身体が怠いわね。とりあえず、湯浴みと着替え、あと軽く何か食べたいわ」
話はそれからゆっくりしましょうとアリアはいつも通りの口調でマリーに大丈夫と笑った。