人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
離縁すると決めたけれど、最速何日でできるだろう? とアリアは考えながら離宮の舗装された道を散歩する。
花壇には花が咲き乱れていて、これから咲く花達が見られないのは残念だなとアリアは思う。
倒れていた3週間の間に仕事のほとんどは別の者に引き継がれていたようなので、その辺の心配もないようだ。
「ざまぁ、断罪ルート回避しただけでも重畳よね」
今世は円満離縁。ここから先は物語に縛られない本当に自由が待っている。ただ、ここから先の時間にはロイがいない。それだけだ。
アリアはしんみりしそうになった自分に喝を入れて、はやく元の感覚を取り戻さないとと身体を動かす。
そのまま歩いていると、ふと遠目に何やら揉めている侍女たちの姿が目に入る。
「〜〜〜---ですから! ここは、アリア様の居住区で」
「どういうおつもりですか! 本来正妃がお過ごしになるダイヤモンド宮をあてがわれておきながらっ!!」
怒鳴るような声と冷たい態度で接する離宮の侍女と萎縮して困っている黒髪の美少女。
アリアは状況を察し、慌てて割って入る。
「どうしたの?」
「アリア様! 実は」
怒鳴りつける侍女を制して、アリアは彼女に問いかける。
「聖女様、どうされました」
「花が綺麗で、散歩をしていただけで」
「ここの花は綺麗ですものね。良ければ、ご一緒してもよろしいですか?」
戸惑いの色に染まっていた黒い瞳がコクンと頷く。
「あなた達もありがとう。私の領域に立ち入らないようにしてくれていたのよね? 割って入ってごめんなさい」
私のためにありがとう、でも許してあげてね? とアリアが微笑めば、ぱぁーっと明るい顔をして静かに去っていった。
(あぶない、ヒナを害して処刑ルート再発するとこだった。悪役姫の強制力強すぎない?)
と仕事熱心な侍女の背中を見送ってほっとため息をついたアリアは黒髪の美少女、時渡りの乙女、聖女ヒナと静かに向き合う。
(ヒナだ。本物の、朝菊陽菜だ)
大きな黒い瞳に風になびく黒いストレートの長い髪、華奢で小柄な身体に、なぜかセーラー服と黒のハイソックスにローファーの女子高生スタイル。
「あの、助けてくださってありがとうございました」
ぺこっと頭を下げる彼女は、まるで初対面のようにアリアに挨拶をする。
アリアは口元を両手で覆って肩を震わせる。
「えっと、どうかしました?」
「ずっと前からファンでした! 握手してくださいっ!!」
アリアはばっと手を差し出し頭を下げる。
いや、違う。
多分、初回でこれは違う。
と、冷静な自分がツッコミを入れる。
だが、2回目の人生で小説のガチファンだった自分が全面に出てしまったのは仕方ないとアリアは思う。
だってこんなに可愛いヒロインが目の前にいるんだもんとロイの事がすっかり頭から抜け落ちたアリアは、ただのファンとしてヒロインと接触することとなった。
花壇には花が咲き乱れていて、これから咲く花達が見られないのは残念だなとアリアは思う。
倒れていた3週間の間に仕事のほとんどは別の者に引き継がれていたようなので、その辺の心配もないようだ。
「ざまぁ、断罪ルート回避しただけでも重畳よね」
今世は円満離縁。ここから先は物語に縛られない本当に自由が待っている。ただ、ここから先の時間にはロイがいない。それだけだ。
アリアはしんみりしそうになった自分に喝を入れて、はやく元の感覚を取り戻さないとと身体を動かす。
そのまま歩いていると、ふと遠目に何やら揉めている侍女たちの姿が目に入る。
「〜〜〜---ですから! ここは、アリア様の居住区で」
「どういうおつもりですか! 本来正妃がお過ごしになるダイヤモンド宮をあてがわれておきながらっ!!」
怒鳴るような声と冷たい態度で接する離宮の侍女と萎縮して困っている黒髪の美少女。
アリアは状況を察し、慌てて割って入る。
「どうしたの?」
「アリア様! 実は」
怒鳴りつける侍女を制して、アリアは彼女に問いかける。
「聖女様、どうされました」
「花が綺麗で、散歩をしていただけで」
「ここの花は綺麗ですものね。良ければ、ご一緒してもよろしいですか?」
戸惑いの色に染まっていた黒い瞳がコクンと頷く。
「あなた達もありがとう。私の領域に立ち入らないようにしてくれていたのよね? 割って入ってごめんなさい」
私のためにありがとう、でも許してあげてね? とアリアが微笑めば、ぱぁーっと明るい顔をして静かに去っていった。
(あぶない、ヒナを害して処刑ルート再発するとこだった。悪役姫の強制力強すぎない?)
と仕事熱心な侍女の背中を見送ってほっとため息をついたアリアは黒髪の美少女、時渡りの乙女、聖女ヒナと静かに向き合う。
(ヒナだ。本物の、朝菊陽菜だ)
大きな黒い瞳に風になびく黒いストレートの長い髪、華奢で小柄な身体に、なぜかセーラー服と黒のハイソックスにローファーの女子高生スタイル。
「あの、助けてくださってありがとうございました」
ぺこっと頭を下げる彼女は、まるで初対面のようにアリアに挨拶をする。
アリアは口元を両手で覆って肩を震わせる。
「えっと、どうかしました?」
「ずっと前からファンでした! 握手してくださいっ!!」
アリアはばっと手を差し出し頭を下げる。
いや、違う。
多分、初回でこれは違う。
と、冷静な自分がツッコミを入れる。
だが、2回目の人生で小説のガチファンだった自分が全面に出てしまったのは仕方ないとアリアは思う。
だってこんなに可愛いヒロインが目の前にいるんだもんとロイの事がすっかり頭から抜け落ちたアリアは、ただのファンとしてヒロインと接触することとなった。