人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
66.悪役姫は、それぞれの幸せについて考える。
「うわぁーベッド広いっ」
とヒナは思わずベッドにダイブする。
そんなヒナの行動を咎めることなく、クスクス笑ったアリアは、
「あら、ヒナの部屋だってベッドもソファーも十分広いでしょ?」
と彼女が今いる部屋を思い浮かべる。
なにせ彼女にあてがわれているのは正妃の住まい。1回目の人生で一時期暮らした事のあるアリアは、あそこがどれほど贅が尽くされた造りになっているか知っている。
「庶民には落ち着かないですよー。常に人がいるし」
「まぁ、うん。それはお察し」
アリア自身は王族の生まれとはいえ、2回目の人生で庶民の生活も経験しているので、落ち着かない気持ちも理解できる。
さて、おしゃべりでもしながら寝ましょうか? とアリアはヒナに笑いかけベッドに横たわった。
ヒナの話を聞きながら、彼女が帝国に馴染めていることにアリアはほっと胸を撫で下ろす。
随分と知り合いも増えて毎日楽しく過ごせているようだ。
「ねぇ、アリア様。アリア様はどうしてこんなに私の事を気にかけてくれるんですか?」
ヒナの黒い瞳がアリアを見ながらそう尋ねる。
「そうね……きっと、最初は罪滅ぼしがしたかったのよ。言ったでしょう? 私は随分あなたに酷い事をしてしまったのだって」
小説の中のヒロインは悪役姫のせいで随分と苦労していたし、実際1回目の人生ではヒナに随分辛くあたってしまった。
ロイの後ろに庇われながら小動物が怯えるような目でアリアを見て、怖いとつぶやくヒナの姿を思い出す。
今世はそうならずに済んでよかったと思うし、まさかお泊まり会ができるほど仲良くなれるとは思わなかった。
「だけど、今は単純にヒナの事が好きだからだと思うわ。"時渡りの乙女"のヒロインは私の推しなんだけど、そうじゃなくて今ここにいるヒナの事が私は好きなのよ」
彼女がいともあっさり口にする"好き"を真似てアリアは言葉を紡ぐ。
「罪悪感を消したくて、今度こそはヒナに良くしてあげようと思っていたはずなのに。困ったわね、ヒナといる時間が楽しくて。これじゃ全然贖罪にならないわね」
まるで友達にでもなれたかのように勘違いしてしまうわといった淡いピンク色の瞳を見ながら、ヒナは微笑む。
「もう、友達なんだと思ってました。同担拒否ですけど」
「とりあえず私、ゼノ様は推してないわ」
あと他のキャラクターも覚えきれてないわとアリアは苦笑する。
「そう、友達……なの」
「ええ、友達です。私、アリア様が好きですよ」
なんならこの世界で最推しですとヒナはベッドで頬杖をついてふふっと楽しそうに笑う。
「私は、1回目にアリア様が会った私じゃないかもしれないけれど。でも、私はアリア様が大好きですよ」
私もアリア様といる時間が楽しいですと言ったヒナは、
「アリア様がアリア様を許せないなら、私がアリア様を許してあげます」
とアリアの手を取る。
びっくりしたように目を大きくしたアリアに、
「ねぇ、アリア様。贖罪ならもう必要ないですよ。私、アリア様が好きですから。だから、アリア様にも幸せになって欲しいです」
ヒナは優しい口調で言葉を紡ぐ。
この世界のヒロインは、悪役姫を好きだと言って、悪役姫の幸せを願ってくれると言う。
アリアは淡いピンク色の瞳を瞬かせ、ありがとうとつぶやいた。
「本当に、ヒナはいい子ね。私もヒナが大好きよ。ヒナの幸せを祈ってる」
「ふふ、聖女っぽいですか?」
「うん、聖女っぽい」
ロイと同様、ヒナにも幸せになって欲しいとアリアは心から願う。
「ねぇ、アリア様。本当に離婚しちゃう気ですか?」
「さっき確認したけど、瘴気の対策が必要なのは、あと1ヶ所なの。ヒナのおかげで魔獣の集団暴走も抑えられたし、浄化が完了すればヒナも討伐隊と出向かなくて済むはずよ。あなたの護衛任務が終わったら帝国を出るつもり」
これで本当に悪役姫は物語から退場だ。キルリアにいる家族を思い浮かべ、会いたいなとアリアは思う。
「どこにいても私は力になるから、ヒナが困ったら呼んで頂戴」
友達なのでしょう? とアリアは優しくそう言った。
とヒナは思わずベッドにダイブする。
そんなヒナの行動を咎めることなく、クスクス笑ったアリアは、
「あら、ヒナの部屋だってベッドもソファーも十分広いでしょ?」
と彼女が今いる部屋を思い浮かべる。
なにせ彼女にあてがわれているのは正妃の住まい。1回目の人生で一時期暮らした事のあるアリアは、あそこがどれほど贅が尽くされた造りになっているか知っている。
「庶民には落ち着かないですよー。常に人がいるし」
「まぁ、うん。それはお察し」
アリア自身は王族の生まれとはいえ、2回目の人生で庶民の生活も経験しているので、落ち着かない気持ちも理解できる。
さて、おしゃべりでもしながら寝ましょうか? とアリアはヒナに笑いかけベッドに横たわった。
ヒナの話を聞きながら、彼女が帝国に馴染めていることにアリアはほっと胸を撫で下ろす。
随分と知り合いも増えて毎日楽しく過ごせているようだ。
「ねぇ、アリア様。アリア様はどうしてこんなに私の事を気にかけてくれるんですか?」
ヒナの黒い瞳がアリアを見ながらそう尋ねる。
「そうね……きっと、最初は罪滅ぼしがしたかったのよ。言ったでしょう? 私は随分あなたに酷い事をしてしまったのだって」
小説の中のヒロインは悪役姫のせいで随分と苦労していたし、実際1回目の人生ではヒナに随分辛くあたってしまった。
ロイの後ろに庇われながら小動物が怯えるような目でアリアを見て、怖いとつぶやくヒナの姿を思い出す。
今世はそうならずに済んでよかったと思うし、まさかお泊まり会ができるほど仲良くなれるとは思わなかった。
「だけど、今は単純にヒナの事が好きだからだと思うわ。"時渡りの乙女"のヒロインは私の推しなんだけど、そうじゃなくて今ここにいるヒナの事が私は好きなのよ」
彼女がいともあっさり口にする"好き"を真似てアリアは言葉を紡ぐ。
「罪悪感を消したくて、今度こそはヒナに良くしてあげようと思っていたはずなのに。困ったわね、ヒナといる時間が楽しくて。これじゃ全然贖罪にならないわね」
まるで友達にでもなれたかのように勘違いしてしまうわといった淡いピンク色の瞳を見ながら、ヒナは微笑む。
「もう、友達なんだと思ってました。同担拒否ですけど」
「とりあえず私、ゼノ様は推してないわ」
あと他のキャラクターも覚えきれてないわとアリアは苦笑する。
「そう、友達……なの」
「ええ、友達です。私、アリア様が好きですよ」
なんならこの世界で最推しですとヒナはベッドで頬杖をついてふふっと楽しそうに笑う。
「私は、1回目にアリア様が会った私じゃないかもしれないけれど。でも、私はアリア様が大好きですよ」
私もアリア様といる時間が楽しいですと言ったヒナは、
「アリア様がアリア様を許せないなら、私がアリア様を許してあげます」
とアリアの手を取る。
びっくりしたように目を大きくしたアリアに、
「ねぇ、アリア様。贖罪ならもう必要ないですよ。私、アリア様が好きですから。だから、アリア様にも幸せになって欲しいです」
ヒナは優しい口調で言葉を紡ぐ。
この世界のヒロインは、悪役姫を好きだと言って、悪役姫の幸せを願ってくれると言う。
アリアは淡いピンク色の瞳を瞬かせ、ありがとうとつぶやいた。
「本当に、ヒナはいい子ね。私もヒナが大好きよ。ヒナの幸せを祈ってる」
「ふふ、聖女っぽいですか?」
「うん、聖女っぽい」
ロイと同様、ヒナにも幸せになって欲しいとアリアは心から願う。
「ねぇ、アリア様。本当に離婚しちゃう気ですか?」
「さっき確認したけど、瘴気の対策が必要なのは、あと1ヶ所なの。ヒナのおかげで魔獣の集団暴走も抑えられたし、浄化が完了すればヒナも討伐隊と出向かなくて済むはずよ。あなたの護衛任務が終わったら帝国を出るつもり」
これで本当に悪役姫は物語から退場だ。キルリアにいる家族を思い浮かべ、会いたいなとアリアは思う。
「どこにいても私は力になるから、ヒナが困ったら呼んで頂戴」
友達なのでしょう? とアリアは優しくそう言った。