人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
70.悪役姫は、想いを伝える。
話をするために場所を移すことに同意したアリアが連れて来られたのはいつもの湖の辺りのベンチだった。
普段は明るい時間帯にここに来ることはないので、こんな時間にロイと2人でここにいるのはとても新鮮だ。
「この転移魔法って1人用じゃないんですね」
あの場から早々に立ち去りたかったアリアにとって、一瞬で移動できたのは非常にありがたかったが、そんな仕様になっているとは初めて知った。
「まぁ手を繋いでいれば2人ギリって感じかな」
そもそもここに立ち入れる人間自体がほとんどいないんだけどとロイは笑う。
確かに対岸はあんなに人で溢れていたのに、こちらは変わらずいつも通り静かで、この空間だけ2人のために切り取られた小さな箱庭のようだった。
アリアはロイの方をじっと見る。その琥珀色の瞳は優しい色をしていて、とても機嫌が良さそうだ。
「あの、今更ですが本当に離縁しなくていいんですか?」
皇族、しかも2国が絡む政略結婚を解消する離婚とはそんなにあっさり決められるものでも取り止められるものでもないのではないかとアリアは今更ながらそう思う。
「離縁したくないんじゃなかったのか?」
「したくない、ですけど。でもそれだとロイ様が困るんじゃ」
こんなにあっさり離縁を撤回してもらえるとも思っていなかったし、と口籠るアリアにロイは指を伸ばし、シャンパンゴールドの髪を撫でる。
「大丈夫そうだな」
触れてもアリアが逃げない事を確認したロイは、アリアに手を伸ばす。
引き寄せられ腰に手を回されたアリアには逃げ場はなく、視界にはすぐ近くにあるロイの精悍な顔しか入らない。
「あの……ロイ、様?」
「やっと話を聞いてくれそうだから、誤解も疑問も1個ずつ解いていこうと思うけど。その前に、伝えておきたい事がある」
驚きで大きく見開かれたアリアの瞳に自分がちゃんと写っている事を確認したロイは、
「俺とアリアは相性最悪なんじゃないかってくらい絶望的に間が悪い。だから、一緒にいたければ努力を惜しんではいけないと今回身に染みて分かった。だから俺は今後アリアに関しては分かりやすすぎるくらいあからさまに、かつ言葉を惜しむ事なく接しようと思う」
そうアリアに向かって宣言をした。
「私は今一体何の宣告を受けたのでしょうか?」
疑問符を掲げたアリアにふっと表情を緩めたロイは、
「端的に言えば"溺愛宣言"ってことだな」
と明確に言葉にする。
「でき……あい?」
聞き慣れない単語に対して脳内で処理が追いつかず、アリアは遅くなった頭をぐるぐると一生懸命回転させる。
そんな困惑を示す淡いピンク色の瞳を愛おしそうに見つめながらロイは言葉を紡ぐ。
「俺はアリアの事を愛している。多分、アリアが考えるより、ずっと前から君の事が好きなんだ。この手を離して失うなんて、考えられないくらいに」
ロイの口から"愛している"なんて単語を直接聞くのは初めてで、アリアは驚いて目を瞬かせる。
普段は明るい時間帯にここに来ることはないので、こんな時間にロイと2人でここにいるのはとても新鮮だ。
「この転移魔法って1人用じゃないんですね」
あの場から早々に立ち去りたかったアリアにとって、一瞬で移動できたのは非常にありがたかったが、そんな仕様になっているとは初めて知った。
「まぁ手を繋いでいれば2人ギリって感じかな」
そもそもここに立ち入れる人間自体がほとんどいないんだけどとロイは笑う。
確かに対岸はあんなに人で溢れていたのに、こちらは変わらずいつも通り静かで、この空間だけ2人のために切り取られた小さな箱庭のようだった。
アリアはロイの方をじっと見る。その琥珀色の瞳は優しい色をしていて、とても機嫌が良さそうだ。
「あの、今更ですが本当に離縁しなくていいんですか?」
皇族、しかも2国が絡む政略結婚を解消する離婚とはそんなにあっさり決められるものでも取り止められるものでもないのではないかとアリアは今更ながらそう思う。
「離縁したくないんじゃなかったのか?」
「したくない、ですけど。でもそれだとロイ様が困るんじゃ」
こんなにあっさり離縁を撤回してもらえるとも思っていなかったし、と口籠るアリアにロイは指を伸ばし、シャンパンゴールドの髪を撫でる。
「大丈夫そうだな」
触れてもアリアが逃げない事を確認したロイは、アリアに手を伸ばす。
引き寄せられ腰に手を回されたアリアには逃げ場はなく、視界にはすぐ近くにあるロイの精悍な顔しか入らない。
「あの……ロイ、様?」
「やっと話を聞いてくれそうだから、誤解も疑問も1個ずつ解いていこうと思うけど。その前に、伝えておきたい事がある」
驚きで大きく見開かれたアリアの瞳に自分がちゃんと写っている事を確認したロイは、
「俺とアリアは相性最悪なんじゃないかってくらい絶望的に間が悪い。だから、一緒にいたければ努力を惜しんではいけないと今回身に染みて分かった。だから俺は今後アリアに関しては分かりやすすぎるくらいあからさまに、かつ言葉を惜しむ事なく接しようと思う」
そうアリアに向かって宣言をした。
「私は今一体何の宣告を受けたのでしょうか?」
疑問符を掲げたアリアにふっと表情を緩めたロイは、
「端的に言えば"溺愛宣言"ってことだな」
と明確に言葉にする。
「でき……あい?」
聞き慣れない単語に対して脳内で処理が追いつかず、アリアは遅くなった頭をぐるぐると一生懸命回転させる。
そんな困惑を示す淡いピンク色の瞳を愛おしそうに見つめながらロイは言葉を紡ぐ。
「俺はアリアの事を愛している。多分、アリアが考えるより、ずっと前から君の事が好きなんだ。この手を離して失うなんて、考えられないくらいに」
ロイの口から"愛している"なんて単語を直接聞くのは初めてで、アリアは驚いて目を瞬かせる。