人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
全部の話を聞き終えて、アリアはただじっと琥珀色の瞳を覗く。
しばらく沈黙が続いたあとで、アリアは琥珀色の瞳を見つめたままゆっくりと口を開いた。
「ロイ様だったんですね。私の名前を何度も呼んでくれたのは」
眠っている間、何度も何度も繰り返し誰かに呼ばれる声を聞いた。
その声はとても優しくて、愛おしそうに『アリア』と呼ぶのに、たまに聞いているこちらの胸が痛くなるほど悲しくて切ない声音で、『どこにも行かないで』とアリアの事を引き留める。
そんな風に悪役姫を愛してくれる"誰か"なんて、この物語には登場しないのだから、全部自分の願望を夢で見ただけだと思っていた。
「ずっと、この手が私のモノであればいいのにと思っていました」
アリアは頬に添えられたロイの手に自分の手を重ね、震える声でそうつぶやく。
「だけど、悪役姫の私にそんな未来は望めないって、知っていたから。あなたは私のモノじゃないって言い聞かせてきたのに」
アリアが淡いピンク色の瞳を瞬かせるとそこから静かに一筋の涙がこぼれ落ちた。
「そんな風にはっきり言われたら、もう逃げられないじゃないですか」
そう言って泣きながら微笑んだアリアは、琥珀色の目から視線を逸さずにゆっくり丁寧に言葉を紡ぐ。
「本当は、ずっと、ずっと、この手を取りたかった。あなたの幸せを祈るんじゃなくて、一緒に幸せの形を探したかった」
それはどれだけ望んでも手に入らなかった、1回目の人生からある願望で。
2回目の人生で、そんな未来はないと知って、自分の気持ちに蓋をした。
「あなたは自分は愛情深い方じゃないって言ったけど、私に信頼をくれて、ずっとこんな私と向き合うことを諦めないでくれたじゃない」
だけど今世で出会ったロイは、アリアが何度目を逸らしても、差し伸べられたその手を振り払っても、いつだって変わらずにアリアを見つけて望んでくれた。
「私は、あなた以上に愛情深い人を知りません」
ずっと憧れている事があるんですとアリアは願望を口にする。
「私の両親は、とても仲が良くて。政略結婚ではあったけれど、同じ時間を過ごす中で何度も何度もお互いの考えや思いを交わして、恋をしたんだそうです」
それはアリアの知っている理想の夫婦の形。
「私もそんな風に、たくさん言葉を交わして、時にはケンカしたり仲直りしたりしながら、同じ時間を過ごす日々を積み重ねて、いつか振り返った時に、一緒に笑い合えるような関係を築きたい」
他の誰でもない、あなたと。
アリアは愛おしそうに琥珀色の瞳を見つめながら、
「ロイ様が好きです。私と恋に落ちてくれますか?」
アリアはロイにそう尋ねる。
ずっとアリアの話を静かに聞いていたロイは、
「俺で良ければ喜んで」
とても優しい口調でそう言った。
「アリア」
アリアの大好きな声が愛おしそうにそう名前を呼んで髪を撫でる。
「はい」
返事をしたアリアに、
「愛してる」
ロイはそう囁いて、優しくアリアに口付けた。
しばらく沈黙が続いたあとで、アリアは琥珀色の瞳を見つめたままゆっくりと口を開いた。
「ロイ様だったんですね。私の名前を何度も呼んでくれたのは」
眠っている間、何度も何度も繰り返し誰かに呼ばれる声を聞いた。
その声はとても優しくて、愛おしそうに『アリア』と呼ぶのに、たまに聞いているこちらの胸が痛くなるほど悲しくて切ない声音で、『どこにも行かないで』とアリアの事を引き留める。
そんな風に悪役姫を愛してくれる"誰か"なんて、この物語には登場しないのだから、全部自分の願望を夢で見ただけだと思っていた。
「ずっと、この手が私のモノであればいいのにと思っていました」
アリアは頬に添えられたロイの手に自分の手を重ね、震える声でそうつぶやく。
「だけど、悪役姫の私にそんな未来は望めないって、知っていたから。あなたは私のモノじゃないって言い聞かせてきたのに」
アリアが淡いピンク色の瞳を瞬かせるとそこから静かに一筋の涙がこぼれ落ちた。
「そんな風にはっきり言われたら、もう逃げられないじゃないですか」
そう言って泣きながら微笑んだアリアは、琥珀色の目から視線を逸さずにゆっくり丁寧に言葉を紡ぐ。
「本当は、ずっと、ずっと、この手を取りたかった。あなたの幸せを祈るんじゃなくて、一緒に幸せの形を探したかった」
それはどれだけ望んでも手に入らなかった、1回目の人生からある願望で。
2回目の人生で、そんな未来はないと知って、自分の気持ちに蓋をした。
「あなたは自分は愛情深い方じゃないって言ったけど、私に信頼をくれて、ずっとこんな私と向き合うことを諦めないでくれたじゃない」
だけど今世で出会ったロイは、アリアが何度目を逸らしても、差し伸べられたその手を振り払っても、いつだって変わらずにアリアを見つけて望んでくれた。
「私は、あなた以上に愛情深い人を知りません」
ずっと憧れている事があるんですとアリアは願望を口にする。
「私の両親は、とても仲が良くて。政略結婚ではあったけれど、同じ時間を過ごす中で何度も何度もお互いの考えや思いを交わして、恋をしたんだそうです」
それはアリアの知っている理想の夫婦の形。
「私もそんな風に、たくさん言葉を交わして、時にはケンカしたり仲直りしたりしながら、同じ時間を過ごす日々を積み重ねて、いつか振り返った時に、一緒に笑い合えるような関係を築きたい」
他の誰でもない、あなたと。
アリアは愛おしそうに琥珀色の瞳を見つめながら、
「ロイ様が好きです。私と恋に落ちてくれますか?」
アリアはロイにそう尋ねる。
ずっとアリアの話を静かに聞いていたロイは、
「俺で良ければ喜んで」
とても優しい口調でそう言った。
「アリア」
アリアの大好きな声が愛おしそうにそう名前を呼んで髪を撫でる。
「はい」
返事をしたアリアに、
「愛してる」
ロイはそう囁いて、優しくアリアに口付けた。