人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
2.悪役姫は、イベントを回避する。
どうして"今"なのだろう。
信じがたい事のはずなのに、当たり前のように疑う事なくそれを受け入れたアリアが一番に抱いた感想は、どうして今この瞬間でなくてはならなかったのか、だった。
アリアは自分の人生で幸せの絶頂とも言える結婚式の最中、何かの啓示のように突如としてそれらを思い出した。
初めはなんだかこのシーンを見た事がある、というぼんやりした既視感から始まり、それは急速に色付いて、実際の出来事として自分の中に落ちてきた。
誓いの言葉が述べられる頃には幸せな気持ちなど微塵もなくなり、ただどうしようもない絶望感がアリアの中を支配した。
(3度目、か。このシーンを見るのは)
3度目ともなれば、新鮮味などあるはずもなく、泣き出しそうな自分を叱責して表情を殺す。
チラリと隣を見やれば、自分より高い位置にブルーグレイの髪と琥珀色の瞳を持つ見飽きることのない精悍な横顔がそこにあり、一見厳かな言葉を真摯に受け入れているように見える。
この政略結婚は自分で選んだもので、今世で初めて彼に会った時からアリアは今日この瞬間、彼の妻になることを心から待ち望んでいたはずだった。
(我ながら、愚か過ぎる)
これから何が起こるのか、この物語がどういう結末を辿るのか、2度の人生を通して確かに自分は知っているはずなのに。
(だと言うのに、私は性懲りも無くこの人に恋をするんだ)
横顔を見ただけで高鳴る鼓動に泣きそうになりながら、一方でこれが物語の強制力なら自分にはどうしようもないと諦めもする。
もう、この時点でアリアはどうしようもなくロイの事を愛してしまっていた。
だからこそ、と思う。
『汝、アリア・ティ・キルリアは、ロイ・ハートネットを夫とし、いついかなる時もこれを愛し、慈しみ、その生涯をかけて夫を支え続ける事を誓いますか?』
いいえ、と言えたらどれだけ良かっただろう。
いいえ、その役目は私のものじゃないわ、と叫びたかった。
「……ハイ」
それができない事は、アリアが一番よく分かっている。
これは政略結婚で、アリアの肩には祖国の愛すべき自分の家族と守るべき国民達の命がのっている。
「誓います」
敬虔なるカリキリア教の信徒である自分が神に嘘の誓いを立てるなどできない。
だから、アリアはこの誓いの続きをの心の中でつぶやいた。
(誓います、今度は絶対邪魔などしない。と)
信じがたい事のはずなのに、当たり前のように疑う事なくそれを受け入れたアリアが一番に抱いた感想は、どうして今この瞬間でなくてはならなかったのか、だった。
アリアは自分の人生で幸せの絶頂とも言える結婚式の最中、何かの啓示のように突如としてそれらを思い出した。
初めはなんだかこのシーンを見た事がある、というぼんやりした既視感から始まり、それは急速に色付いて、実際の出来事として自分の中に落ちてきた。
誓いの言葉が述べられる頃には幸せな気持ちなど微塵もなくなり、ただどうしようもない絶望感がアリアの中を支配した。
(3度目、か。このシーンを見るのは)
3度目ともなれば、新鮮味などあるはずもなく、泣き出しそうな自分を叱責して表情を殺す。
チラリと隣を見やれば、自分より高い位置にブルーグレイの髪と琥珀色の瞳を持つ見飽きることのない精悍な横顔がそこにあり、一見厳かな言葉を真摯に受け入れているように見える。
この政略結婚は自分で選んだもので、今世で初めて彼に会った時からアリアは今日この瞬間、彼の妻になることを心から待ち望んでいたはずだった。
(我ながら、愚か過ぎる)
これから何が起こるのか、この物語がどういう結末を辿るのか、2度の人生を通して確かに自分は知っているはずなのに。
(だと言うのに、私は性懲りも無くこの人に恋をするんだ)
横顔を見ただけで高鳴る鼓動に泣きそうになりながら、一方でこれが物語の強制力なら自分にはどうしようもないと諦めもする。
もう、この時点でアリアはどうしようもなくロイの事を愛してしまっていた。
だからこそ、と思う。
『汝、アリア・ティ・キルリアは、ロイ・ハートネットを夫とし、いついかなる時もこれを愛し、慈しみ、その生涯をかけて夫を支え続ける事を誓いますか?』
いいえ、と言えたらどれだけ良かっただろう。
いいえ、その役目は私のものじゃないわ、と叫びたかった。
「……ハイ」
それができない事は、アリアが一番よく分かっている。
これは政略結婚で、アリアの肩には祖国の愛すべき自分の家族と守るべき国民達の命がのっている。
「誓います」
敬虔なるカリキリア教の信徒である自分が神に嘘の誓いを立てるなどできない。
だから、アリアはこの誓いの続きをの心の中でつぶやいた。
(誓います、今度は絶対邪魔などしない。と)