人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
22.悪役姫は、変化に戸惑う。
「新婚旅行、ですか?」
アリアは訝しげに眉を寄せ、ロイの発した単語を繰り返しながら彼の表情からその意図を読み取ろうとする。
「素直に好意として受け取って欲しい、と言いたいところだが、そうしないあたりに姫の成長を感じるな」
行きたくないという心情を隠す事なく全面に押し出すアリアに対し、
「でも今回は純粋に姫と親睦を深めようと思って時間を空けたのだから、付き合ってくれるだろ?」
ロイは口角を上げて意地悪く笑い、アリアのサイン入りの誓約書をチラつかせる。
「私が狩猟大会で負けた代償。殿下からのお願いが、旅行への同伴ですか? 一体何を企んでるんです?」
淡いピンク色の瞳はなおじっと訝しげに琥珀色の瞳を見つめる。
「さて、なんだと思う?」
そんな視線を真っ向から受け止めたロイは、とても楽しげにそう言ってアリアの手の上にフリージアの花を一本載せた。
結婚して早3ヶ月。アリアは離宮での生活にすっかり慣れ、割とゆったりとした毎日を過ごしていた。
1回目の人生の記憶の中では、今時期はいくつか小さな公務に付き添ったり、帝国淑女らしく沢山のお茶会に呼ばれて中身のない時間を過ごしていたはずなのだが、びっくりするくらい誰からも呼ばれない。
どうやら狩猟大会での振る舞いで帝国の紳士淑女の皆様から顰蹙を買ったらしく、皇太子妃としてのアリアの評価は氷点下。
その上皇太子妃でありながら騎士達を惑わせ誘惑しているなどと身に覚えのない中傷まで出回っており、本館と行き来する機会のあるマリーがブチ切れ寸前だった。
離宮にいてさえそんな言葉が漏れ聞こえてくるのだから、そんな妻を持ったロイの心情を思えばアリアのことを遠ざけても良さそうなのに、狩猟大会の後処理以降何故かずっとロイの離宮訪問が続いている。そして必ず花を一本持ってきて、アリアの手に載せるのだ。
「殿下、暇なんですか?」
そんなわけはないと分かっているのだが、あまりにも頻回に来る上、旅行しようなんていうものだから思わずアリアはそう尋ねる。
「姫が凹んでるんじゃないかなーと思って、わざわざ見に来てあげてるんじゃないですか?」
爽やかにそんなことを宣うキラキラと後光でも差しそうなロイの素敵な笑顔を見て、アリアはチッと舌打ちをした。
「遠慮がなくなってきたな」
そんなアリアを見て、ロイの琥珀色の瞳が愉快そうに笑う。
「殿下相手に猫かぶるのがバカらしくなっただけです。別に、殿下も私と根比べしたいわけじゃないでしょ?」
ため息交じりにそう言ったアリアは手に持っていたフリージアの花に視線を落として、花言葉を思い浮かべる。
親愛、友情、期待、感謝、純潔と並べさてどの意味かしら? と内心でつぶやいた。
アリアは訝しげに眉を寄せ、ロイの発した単語を繰り返しながら彼の表情からその意図を読み取ろうとする。
「素直に好意として受け取って欲しい、と言いたいところだが、そうしないあたりに姫の成長を感じるな」
行きたくないという心情を隠す事なく全面に押し出すアリアに対し、
「でも今回は純粋に姫と親睦を深めようと思って時間を空けたのだから、付き合ってくれるだろ?」
ロイは口角を上げて意地悪く笑い、アリアのサイン入りの誓約書をチラつかせる。
「私が狩猟大会で負けた代償。殿下からのお願いが、旅行への同伴ですか? 一体何を企んでるんです?」
淡いピンク色の瞳はなおじっと訝しげに琥珀色の瞳を見つめる。
「さて、なんだと思う?」
そんな視線を真っ向から受け止めたロイは、とても楽しげにそう言ってアリアの手の上にフリージアの花を一本載せた。
結婚して早3ヶ月。アリアは離宮での生活にすっかり慣れ、割とゆったりとした毎日を過ごしていた。
1回目の人生の記憶の中では、今時期はいくつか小さな公務に付き添ったり、帝国淑女らしく沢山のお茶会に呼ばれて中身のない時間を過ごしていたはずなのだが、びっくりするくらい誰からも呼ばれない。
どうやら狩猟大会での振る舞いで帝国の紳士淑女の皆様から顰蹙を買ったらしく、皇太子妃としてのアリアの評価は氷点下。
その上皇太子妃でありながら騎士達を惑わせ誘惑しているなどと身に覚えのない中傷まで出回っており、本館と行き来する機会のあるマリーがブチ切れ寸前だった。
離宮にいてさえそんな言葉が漏れ聞こえてくるのだから、そんな妻を持ったロイの心情を思えばアリアのことを遠ざけても良さそうなのに、狩猟大会の後処理以降何故かずっとロイの離宮訪問が続いている。そして必ず花を一本持ってきて、アリアの手に載せるのだ。
「殿下、暇なんですか?」
そんなわけはないと分かっているのだが、あまりにも頻回に来る上、旅行しようなんていうものだから思わずアリアはそう尋ねる。
「姫が凹んでるんじゃないかなーと思って、わざわざ見に来てあげてるんじゃないですか?」
爽やかにそんなことを宣うキラキラと後光でも差しそうなロイの素敵な笑顔を見て、アリアはチッと舌打ちをした。
「遠慮がなくなってきたな」
そんなアリアを見て、ロイの琥珀色の瞳が愉快そうに笑う。
「殿下相手に猫かぶるのがバカらしくなっただけです。別に、殿下も私と根比べしたいわけじゃないでしょ?」
ため息交じりにそう言ったアリアは手に持っていたフリージアの花に視線を落として、花言葉を思い浮かべる。
親愛、友情、期待、感謝、純潔と並べさてどの意味かしら? と内心でつぶやいた。