人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
部屋の前でクラウドに声をかけると、訪ねて来たアリアを見てぱぁぁっと顔を明るくしたクラウドは、ロイに確認することもなくすぐさまアリアと共に中に入る。
「おい、クラウド。仕事中は集中キレるから部屋に入るなっていつも言ってるだろうが」
チッと舌打ちをし、あからさまに不機嫌なロイを見て全然大丈夫じゃないじゃんとアリアはクラウドの後ろで小さくなる。
玉露でテンションがあがり、マリーの助言を無視した事を今更ながら後悔する。
「でーんかっ! いいんですか? そんな事を言っちゃって〜」
が、そんなロイの不機嫌など全く気にも止めずクラウドは絡みにいく。
「お前本当鬱陶しいな」
ロイのいつもより低い声と部屋に漂う不穏な空気に思わず回れ右をしそうになったアリアを、
「じゃん! 殿下っ、なんとアリア姫がわざわざ夜這いに来てくれましたー」
全く空気を読まない口調でクラウドが紹介する。
「は? いや、ちがっ」
クラウドのセリフに顔を青くしたり赤くしたりしながら、アリアはブンブンと首を横に振る。
「いやぁ、マジで結婚以降どうなるかと思ってたけど、殿下良かったっすね! 旅行マジック!!」
「あの、ちょっ、ま……」
今どう考えても入室禁止じゃん。
なんで通したの? とパニックになりながらアリアはクラウドの事を張り倒して逃げたい衝動に駆られる。
眼鏡越しにじっと琥珀色の瞳に見つめられ、アリアはカタカタ震えながら、ああ、動物が狩られる時の気持ちってこんななんだとヘビに睨まれたカエルの逃げられない気持ちを体感的に理解した。
「んじゃあとは若いお二人で〜俺超できる部下!」
ぐっと親指を立てていい笑顔でクラウドはそう言うと、
「は、ちょ、本当ま」
待ってとアリアが言い終わる前に、じゃっと言い残してクラウドは本当にアリアを部屋に残して去っていった。
パタンッと扉の閉まる音とガチャっと外から鍵がかかる音を聞きながら、マジで何してくれてんの!? とアリアは内心で叫ぶ事しかできなかった。
部屋に残された2人の間で重い沈黙が漂う。
「で、殿下っ!」
沈黙に耐えられずアリアは声をかける。
「眼鏡、似合いますね」
が、咄嗟に何を言えばいいのかわからず、出てきた言葉がコレだった。
いや、違う。これは絶対違うって事だけは分かる。
見た事のないロイの眼鏡姿に、かっこいいけど小説にそんな設定あったっけなんて、思考の遅くなった頭をぐるぐる回転させて、アリアは必死に取り繕う。
そんなアリアを見てため息をついたロイは、アリアの方に手を伸ばす。伸びてきた手を認識し、怒られるっと子どもみたいに肩をびくっとさせて目をぎゅっと閉じる。
「っふ……前も言ったけど、そこで目を閉じたら何されても文句言えないぞ、アリア」
伸びてきた手はアリアの頭に乗せられていて、子どもを落ち着かせるみたいにゆっくりアリアの頭を撫でる。
落ちてきた声は怒ってなどいなくて、先程までの不穏な空気も消えている。そっと目を開ければ、自分を見つめる琥珀色の瞳と目があった。
「遠視なんだ。普段はかけないが、長時間集中するとつかれるからかけることにしている」
アリアは一瞬何を言われているのかわからずポカンとするが、さっきの咄嗟に出た言葉の返事だと分かり、そうなんですねと小さく答えた。
「あと、クラウドとは乳兄弟でな。昔から側にいるせいでだいぶ気安い。普段はあんな感じだが、悪気はない。許してやってくれ」
それは小説の設定で知っていますとは言えないアリアは黙ったままコクコクコクと何度も頷いた。
「で、アリアの用事は?」
夜這いに来たとは思われていないらしいとほっとした表情を浮かべたアリアは、
「夜分に、申し訳ありません。お茶を一杯いかがですか?」
ふーっと息を吐き出して、ようやく本題を切り出した。
「おい、クラウド。仕事中は集中キレるから部屋に入るなっていつも言ってるだろうが」
チッと舌打ちをし、あからさまに不機嫌なロイを見て全然大丈夫じゃないじゃんとアリアはクラウドの後ろで小さくなる。
玉露でテンションがあがり、マリーの助言を無視した事を今更ながら後悔する。
「でーんかっ! いいんですか? そんな事を言っちゃって〜」
が、そんなロイの不機嫌など全く気にも止めずクラウドは絡みにいく。
「お前本当鬱陶しいな」
ロイのいつもより低い声と部屋に漂う不穏な空気に思わず回れ右をしそうになったアリアを、
「じゃん! 殿下っ、なんとアリア姫がわざわざ夜這いに来てくれましたー」
全く空気を読まない口調でクラウドが紹介する。
「は? いや、ちがっ」
クラウドのセリフに顔を青くしたり赤くしたりしながら、アリアはブンブンと首を横に振る。
「いやぁ、マジで結婚以降どうなるかと思ってたけど、殿下良かったっすね! 旅行マジック!!」
「あの、ちょっ、ま……」
今どう考えても入室禁止じゃん。
なんで通したの? とパニックになりながらアリアはクラウドの事を張り倒して逃げたい衝動に駆られる。
眼鏡越しにじっと琥珀色の瞳に見つめられ、アリアはカタカタ震えながら、ああ、動物が狩られる時の気持ちってこんななんだとヘビに睨まれたカエルの逃げられない気持ちを体感的に理解した。
「んじゃあとは若いお二人で〜俺超できる部下!」
ぐっと親指を立てていい笑顔でクラウドはそう言うと、
「は、ちょ、本当ま」
待ってとアリアが言い終わる前に、じゃっと言い残してクラウドは本当にアリアを部屋に残して去っていった。
パタンッと扉の閉まる音とガチャっと外から鍵がかかる音を聞きながら、マジで何してくれてんの!? とアリアは内心で叫ぶ事しかできなかった。
部屋に残された2人の間で重い沈黙が漂う。
「で、殿下っ!」
沈黙に耐えられずアリアは声をかける。
「眼鏡、似合いますね」
が、咄嗟に何を言えばいいのかわからず、出てきた言葉がコレだった。
いや、違う。これは絶対違うって事だけは分かる。
見た事のないロイの眼鏡姿に、かっこいいけど小説にそんな設定あったっけなんて、思考の遅くなった頭をぐるぐる回転させて、アリアは必死に取り繕う。
そんなアリアを見てため息をついたロイは、アリアの方に手を伸ばす。伸びてきた手を認識し、怒られるっと子どもみたいに肩をびくっとさせて目をぎゅっと閉じる。
「っふ……前も言ったけど、そこで目を閉じたら何されても文句言えないぞ、アリア」
伸びてきた手はアリアの頭に乗せられていて、子どもを落ち着かせるみたいにゆっくりアリアの頭を撫でる。
落ちてきた声は怒ってなどいなくて、先程までの不穏な空気も消えている。そっと目を開ければ、自分を見つめる琥珀色の瞳と目があった。
「遠視なんだ。普段はかけないが、長時間集中するとつかれるからかけることにしている」
アリアは一瞬何を言われているのかわからずポカンとするが、さっきの咄嗟に出た言葉の返事だと分かり、そうなんですねと小さく答えた。
「あと、クラウドとは乳兄弟でな。昔から側にいるせいでだいぶ気安い。普段はあんな感じだが、悪気はない。許してやってくれ」
それは小説の設定で知っていますとは言えないアリアは黙ったままコクコクコクと何度も頷いた。
「で、アリアの用事は?」
夜這いに来たとは思われていないらしいとほっとした表情を浮かべたアリアは、
「夜分に、申し訳ありません。お茶を一杯いかがですか?」
ふーっと息を吐き出して、ようやく本題を切り出した。