人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
夜明け前に目が覚めたアリアは、ぼんやりする頭で周囲を見渡し、あのままロイの部屋で泣き喚いて寝てしまった事を思い出し、顔を赤くしたり青くしたりしながら状況を飲み込んだ。
ベッドにも部屋にもロイはおらず、申し訳なさでいっぱいになりながら、机に昨夜の礼と詫びと部屋に戻る旨を記載したメモを残して、アリアは部屋を後にした。
(私、何にも分かっていなかった)
泣き喚いて感情を出し切った頭は冴え渡り、目こそ腫れていたけれど憑き物が落ちたかのようにアリアの表情は晴れ晴れとしていた。
(私は、何も知らなかった)
1回目の人生の時からロイは選ばれた特別な人間なのだから、なんでもできて当たり前だと思っていた。
2回目の人生でここがファンタジー小説の世界の中で、彼が主人公だと知ってからは尚更、そんな思いが募っていた。
(そんなわけ、ないじゃない!)
ロイの部屋には仕事以外にも沢山の書籍が積んであって、寝る間も惜しんで彼が研鑽している様子が窺えた。
3回目の人生で、初めてロイの血の滲むような努力の跡を垣間見た。沢山の命を背負って、人の上に立つという事は、こういう事なのだとアリアはようやく理解した。
(なのに、私はそんなロイ様の姿を知ろうとすらせず、人のせいにして、嘆いてばかりで。なんて恥ずかしい)
アリアは唐突に理解する。
きっと自分はロイに恋をしていたのではない。自分で作り上げたロイという人物の幻想に、つまり恋に恋していただけだったのだと。
そんな幻想に囚われて、考えることを放棄して、大事なものを見ようともせず、1度目の人生は破滅したのかと思うとアリアは自分が情けなくて、嫌になる。
(悲劇のヒロインごっこはもう終わりよ、アリア)
パチンッと両頬を自身の両手で叩いて気合いを入れる。
変わりたい、と強く思った。
誰かに依存したりせず、自分の力で考えて、自分の目で物事を見極め、自分で責任を取れる、そんなロイのようなかっこいい自分になりたい。
「失恋旅行、叶っちゃったな」
アリアはふふっと口角を上げて笑う。アリアは抱えきれなかった初恋の呪縛から解かれた気がした。
「さぁ、何からはじめましょうか?」
淡いピンク色の瞳に決意が宿る。
せっかくロイにもらったこのチャンス、活かしてみせる。
この物語から退場するまでは、ロイにそしていつかこの世界にやってくるヒナに誠心誠意仕えよう。
もうロイとヒナが共にいる姿を見ても、きっと私は羨ましがったり嫉妬に駆られることはないだろう。
まだ、何が変わったわけでもないのにアリアは確かにそう確信した。
ベッドにも部屋にもロイはおらず、申し訳なさでいっぱいになりながら、机に昨夜の礼と詫びと部屋に戻る旨を記載したメモを残して、アリアは部屋を後にした。
(私、何にも分かっていなかった)
泣き喚いて感情を出し切った頭は冴え渡り、目こそ腫れていたけれど憑き物が落ちたかのようにアリアの表情は晴れ晴れとしていた。
(私は、何も知らなかった)
1回目の人生の時からロイは選ばれた特別な人間なのだから、なんでもできて当たり前だと思っていた。
2回目の人生でここがファンタジー小説の世界の中で、彼が主人公だと知ってからは尚更、そんな思いが募っていた。
(そんなわけ、ないじゃない!)
ロイの部屋には仕事以外にも沢山の書籍が積んであって、寝る間も惜しんで彼が研鑽している様子が窺えた。
3回目の人生で、初めてロイの血の滲むような努力の跡を垣間見た。沢山の命を背負って、人の上に立つという事は、こういう事なのだとアリアはようやく理解した。
(なのに、私はそんなロイ様の姿を知ろうとすらせず、人のせいにして、嘆いてばかりで。なんて恥ずかしい)
アリアは唐突に理解する。
きっと自分はロイに恋をしていたのではない。自分で作り上げたロイという人物の幻想に、つまり恋に恋していただけだったのだと。
そんな幻想に囚われて、考えることを放棄して、大事なものを見ようともせず、1度目の人生は破滅したのかと思うとアリアは自分が情けなくて、嫌になる。
(悲劇のヒロインごっこはもう終わりよ、アリア)
パチンッと両頬を自身の両手で叩いて気合いを入れる。
変わりたい、と強く思った。
誰かに依存したりせず、自分の力で考えて、自分の目で物事を見極め、自分で責任を取れる、そんなロイのようなかっこいい自分になりたい。
「失恋旅行、叶っちゃったな」
アリアはふふっと口角を上げて笑う。アリアは抱えきれなかった初恋の呪縛から解かれた気がした。
「さぁ、何からはじめましょうか?」
淡いピンク色の瞳に決意が宿る。
せっかくロイにもらったこのチャンス、活かしてみせる。
この物語から退場するまでは、ロイにそしていつかこの世界にやってくるヒナに誠心誠意仕えよう。
もうロイとヒナが共にいる姿を見ても、きっと私は羨ましがったり嫉妬に駆られることはないだろう。
まだ、何が変わったわけでもないのにアリアは確かにそう確信した。