人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
28.悪役姫は、立ち上がる。
「俺、殿下のこと信じてたのにぃ」
クラウドは口元を押さえてくっと泣き真似をして見せる。
「一体殿下はいつからアリア姫に無体を働くような野蛮人に……っちょ、いた。いたたたたたたたっっつ!! ギブ、マジでギブ!! 冗談だって、ちょっ、マジで落ち着いて。ルーク、ヘルプ! ヤベェって、腕取れる。ルーク、ちょっ、殿下どーにかして」
イラッとした表情を浮かべたロイは無言のままあっという間にクラウドを地面に沈め、腕を締め上げ続ける。
たまらずクラウドはルークにヘルプを出すが、
「折れる、じゃなくて取れるって辺りにロイ様のお怒りを感じますね。クラウド、自業自得です。あとうるさい」
ルークは取り合う事なくそう言った。
「だってぇ、明らかに泣き腫らした顔で明け方部屋から出てきたと思ったら、観光すら行かず最終日までずっと労働って流石に姫様可哀想すぎん?」
「別に俺は強要してない」
ぱっと腕を離したロイは、療養所に視線を向ける。あの日から3日、アリアはずっとロイと別行動を取り、療養所や旅館内で調べものをしている。
かと言ってロイの事を避けているわけでもなく、分からない事や困っている事、意見を聞きたい時は積極的に声をかけにくるし、食事時などのタイミングを見計らってこまめに報告に来る。
「またまたー。めっちゃロックオンしてたじゃん。どーせまた誘導したんでしょ。殿下悪ぅー」
懲りないクラウドは手をヒラヒラさせて揶揄うようにそう言った。
「……今回は本当に何もしていない」
あの日、ひどく傷ついた様子で泣くアリアを前に、そんな事はできなかった。努力が必ずしも報われるわけではない事をロイは知っている。
優しい言葉をかけてやることはできたかもしれない。だが、泣いているアリアを見て、彼女にはどうしても、彼女自身の力で立ち上がって欲しいと思ってしまった。
らしくないなと、ロイが苦笑したタイミングでアリアが療養所から顔を出し、ロイと目が合った。
アリアは淡いピンク色の瞳を嬉しそうに細めてコチラにやってくる。その手には小さな白い花が握られていた。
「おはようございます、殿下。それにルークとクラウドも」
ロイ達に挨拶をしたアリアは白い花を嬉しそうに見せる。
「比較的軽症の方が今日は起き上がれて一緒に散歩したんです。お花もらっちゃいました」
今日は出血がなくてと患者の報告をするアリアの嬉しそうな様子を見て、頭を撫でようとロイが手を伸ばしかけたところで、
「あ、私先生に相談があったんでした。報告書はまたのちほど。失礼しますね」
軽く礼をして踵を返し、アリアは忙しそうにパタパタと去っていく。
「なんだかアリア様雰囲気変わりましたね」
楽しそうな背中を見送ってルークはぽつりと感想を述べる。
「うーわぁ。殿下の手のやり場が迷子」
その隣でそう漏らしたクラウドは行き場をなくしたロイの手で顔面を強打された。
「投擲姫に振られたからって俺の顔的にしないでくださいよ」
「まだ足らないなら訓練付き合うが?」
「えー骨休めになんないじゃん」
「投擲は姫様の専門じゃありませんよ」
3人とも一斉に声のした背後を振り向く。気を抜いたつもりなど毛頭ないのに、声をかけられるまで全くマリーの存在に気づかなかった。
クラウドは口元を押さえてくっと泣き真似をして見せる。
「一体殿下はいつからアリア姫に無体を働くような野蛮人に……っちょ、いた。いたたたたたたたっっつ!! ギブ、マジでギブ!! 冗談だって、ちょっ、マジで落ち着いて。ルーク、ヘルプ! ヤベェって、腕取れる。ルーク、ちょっ、殿下どーにかして」
イラッとした表情を浮かべたロイは無言のままあっという間にクラウドを地面に沈め、腕を締め上げ続ける。
たまらずクラウドはルークにヘルプを出すが、
「折れる、じゃなくて取れるって辺りにロイ様のお怒りを感じますね。クラウド、自業自得です。あとうるさい」
ルークは取り合う事なくそう言った。
「だってぇ、明らかに泣き腫らした顔で明け方部屋から出てきたと思ったら、観光すら行かず最終日までずっと労働って流石に姫様可哀想すぎん?」
「別に俺は強要してない」
ぱっと腕を離したロイは、療養所に視線を向ける。あの日から3日、アリアはずっとロイと別行動を取り、療養所や旅館内で調べものをしている。
かと言ってロイの事を避けているわけでもなく、分からない事や困っている事、意見を聞きたい時は積極的に声をかけにくるし、食事時などのタイミングを見計らってこまめに報告に来る。
「またまたー。めっちゃロックオンしてたじゃん。どーせまた誘導したんでしょ。殿下悪ぅー」
懲りないクラウドは手をヒラヒラさせて揶揄うようにそう言った。
「……今回は本当に何もしていない」
あの日、ひどく傷ついた様子で泣くアリアを前に、そんな事はできなかった。努力が必ずしも報われるわけではない事をロイは知っている。
優しい言葉をかけてやることはできたかもしれない。だが、泣いているアリアを見て、彼女にはどうしても、彼女自身の力で立ち上がって欲しいと思ってしまった。
らしくないなと、ロイが苦笑したタイミングでアリアが療養所から顔を出し、ロイと目が合った。
アリアは淡いピンク色の瞳を嬉しそうに細めてコチラにやってくる。その手には小さな白い花が握られていた。
「おはようございます、殿下。それにルークとクラウドも」
ロイ達に挨拶をしたアリアは白い花を嬉しそうに見せる。
「比較的軽症の方が今日は起き上がれて一緒に散歩したんです。お花もらっちゃいました」
今日は出血がなくてと患者の報告をするアリアの嬉しそうな様子を見て、頭を撫でようとロイが手を伸ばしかけたところで、
「あ、私先生に相談があったんでした。報告書はまたのちほど。失礼しますね」
軽く礼をして踵を返し、アリアは忙しそうにパタパタと去っていく。
「なんだかアリア様雰囲気変わりましたね」
楽しそうな背中を見送ってルークはぽつりと感想を述べる。
「うーわぁ。殿下の手のやり場が迷子」
その隣でそう漏らしたクラウドは行き場をなくしたロイの手で顔面を強打された。
「投擲姫に振られたからって俺の顔的にしないでくださいよ」
「まだ足らないなら訓練付き合うが?」
「えー骨休めになんないじゃん」
「投擲は姫様の専門じゃありませんよ」
3人とも一斉に声のした背後を振り向く。気を抜いたつもりなど毛頭ないのに、声をかけられるまで全くマリーの存在に気づかなかった。