人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
29.悪役姫は、過程に拘らない。
あっという間に、アリアと約束したひと月が過ぎた。
ロイはルークとクラウドを連れて再び転移魔法でゲートをくぐる。
「お久しぶりです、殿下。ルーク様とクラウド様もお変わりないようで」
宿に来た3人を出迎えたのはマリーだった。
「申し訳ありません、姫様は所用で海岸まで出ていて。夕刻までには多分戻るかと思うのですが」
止めたんですけど、走って行っちゃってとすまなさそうに言ったマリーに、
「そうか。じゃあ迎えに行くか」
怒るでもなくロイはそう言った。
「先に療養者の確認をしなくて良いのですか?」
「楽しみは取っておく派なんでな」
さて、ひと月でアリアが何を成したか見に行くかと踵を返したロイの背中に、
「殿下、先に謝っておきます、ごめんなさい」
マリーはため息混じりに声をかけた。
「何々? やっぱり無理だった感じ?」
クラウドが別に驚かないってと茶化すのをスルーしたマリーは、
「あんまり叱らないでやってください。本人、大真面目なんで」
とだけ言って頭を下げてロイの背中を見送った。
海岸には人だかりができていた。
遠目に海の魔物、クラーケンが暴れているのを確認し、ロイは剣を片手に走り出す。が、ロイの剣が届くより先にクラーケンはその場に倒れた。
一体何がとロイが足を止めて視線を上げた先に目的の人物は堂々たる風格でそこにいた。
大剣を肩に背負い、シャンパンゴールドの髪をはためかせ、紅と金の宝石のような不思議な色に耀く瞳で、倒したクラーケンの上で女性をお姫様抱っこで抱えていた。
「お嬢様、お怪我はありませんか?」
「は、はいっ」
にこっと微笑むアリアに救出された女性は顔を赤らめ小さく答える。
「そう、降りるからいい子にしててね?」
アリアはそう言うと、女性を抱えたままストンと身軽に地上に降り立つと、そっと彼女を下ろしてあげた。
「怖かったわね、もう大丈夫よ」
後光が差しそうなくらい美しい騎士に頭を撫でられて、アリアを見つめる女性は完全に骨抜き状態だ。
その一連の光景はさながら歌劇のワンシーンの様で、野次馬だった人々はアリアを見つめる観客と化している。
「きゃーアリア様よっ!」
「ああ、今日もカッコいい」
「あそこまでイケメンだともはや王子様よね。素敵、私も救出されたい」
アリアを見つめる女の子たちからそんな黄色悲鳴が上がる。そんな声を拾ったアリアはその子たちの方に視線を流し、唇に指をあてしぃーと動作で示しウィンクして見せる。
並の人間がやればキザで嫌味でしかない動作も、眉目秀麗なアリアがやれば洗練された動作として人目を惹き、黄色悲鳴と歓声が湧き上がる。
「頭ーさすがっす! クラーケンどうします?」
と、どう見てもゴロツキというか海賊だと分かる風貌の男がアリアの事を頭と呼び指示を仰ぐ。
「いつも通り処理して、辺境伯に流しておいて。あなた達の取り分は3割で」
「りょーかいっす」
と元気よく返事をした海賊達が生き生きとアリアの元で働いている。
コレは一体どういう状況か?
ロイが目の前の光景をどう解釈するか悩み出したところで、渦中にいたアリアと目が合った。
「あー、でーんかー!! 来てくれたんですねー!」
犬だったら千切れんばかりに尻尾振ってそうだなと思わずそんな感想を抱くほどぶんぶんと両手を振りながら、満面の笑みでアリアはロイにそう叫んだ。
ロイはルークとクラウドを連れて再び転移魔法でゲートをくぐる。
「お久しぶりです、殿下。ルーク様とクラウド様もお変わりないようで」
宿に来た3人を出迎えたのはマリーだった。
「申し訳ありません、姫様は所用で海岸まで出ていて。夕刻までには多分戻るかと思うのですが」
止めたんですけど、走って行っちゃってとすまなさそうに言ったマリーに、
「そうか。じゃあ迎えに行くか」
怒るでもなくロイはそう言った。
「先に療養者の確認をしなくて良いのですか?」
「楽しみは取っておく派なんでな」
さて、ひと月でアリアが何を成したか見に行くかと踵を返したロイの背中に、
「殿下、先に謝っておきます、ごめんなさい」
マリーはため息混じりに声をかけた。
「何々? やっぱり無理だった感じ?」
クラウドが別に驚かないってと茶化すのをスルーしたマリーは、
「あんまり叱らないでやってください。本人、大真面目なんで」
とだけ言って頭を下げてロイの背中を見送った。
海岸には人だかりができていた。
遠目に海の魔物、クラーケンが暴れているのを確認し、ロイは剣を片手に走り出す。が、ロイの剣が届くより先にクラーケンはその場に倒れた。
一体何がとロイが足を止めて視線を上げた先に目的の人物は堂々たる風格でそこにいた。
大剣を肩に背負い、シャンパンゴールドの髪をはためかせ、紅と金の宝石のような不思議な色に耀く瞳で、倒したクラーケンの上で女性をお姫様抱っこで抱えていた。
「お嬢様、お怪我はありませんか?」
「は、はいっ」
にこっと微笑むアリアに救出された女性は顔を赤らめ小さく答える。
「そう、降りるからいい子にしててね?」
アリアはそう言うと、女性を抱えたままストンと身軽に地上に降り立つと、そっと彼女を下ろしてあげた。
「怖かったわね、もう大丈夫よ」
後光が差しそうなくらい美しい騎士に頭を撫でられて、アリアを見つめる女性は完全に骨抜き状態だ。
その一連の光景はさながら歌劇のワンシーンの様で、野次馬だった人々はアリアを見つめる観客と化している。
「きゃーアリア様よっ!」
「ああ、今日もカッコいい」
「あそこまでイケメンだともはや王子様よね。素敵、私も救出されたい」
アリアを見つめる女の子たちからそんな黄色悲鳴が上がる。そんな声を拾ったアリアはその子たちの方に視線を流し、唇に指をあてしぃーと動作で示しウィンクして見せる。
並の人間がやればキザで嫌味でしかない動作も、眉目秀麗なアリアがやれば洗練された動作として人目を惹き、黄色悲鳴と歓声が湧き上がる。
「頭ーさすがっす! クラーケンどうします?」
と、どう見てもゴロツキというか海賊だと分かる風貌の男がアリアの事を頭と呼び指示を仰ぐ。
「いつも通り処理して、辺境伯に流しておいて。あなた達の取り分は3割で」
「りょーかいっす」
と元気よく返事をした海賊達が生き生きとアリアの元で働いている。
コレは一体どういう状況か?
ロイが目の前の光景をどう解釈するか悩み出したところで、渦中にいたアリアと目が合った。
「あー、でーんかー!! 来てくれたんですねー!」
犬だったら千切れんばかりに尻尾振ってそうだなと思わずそんな感想を抱くほどぶんぶんと両手を振りながら、満面の笑みでアリアはロイにそう叫んだ。