人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「殿下、一体どうしてしまわれたというのですか? お仕事もせずに離宮でダラダラお茶飲んでるなんてらしくないです」

 ロイは訳もなく仕事を放棄するタイプではないが、こうも連日離宮に通っていては通常業務だって滞っているはずだ。
 何よりロイの職務放棄のせいですれ違っただけでルークに睨まれ小言を言われる始末。

「んーつれない妻の顔が見たくって」

「何をバカな事を言っているんですか!」

 アリアは暖簾に腕押し状態のロイを叱責する。これでは側から見た自分は真面目で優秀な皇太子を堕落させた悪女みたいではないかとアリアは頭を抱えそうになる。

「それに仕事はしてる。離宮の人間(使用人)全部アリアに好意的な奴に入れ替えただろ? わざわざ調査してスカウトしたからそこそこ骨が折れたぞ」

「は? この急な人事異動も殿下の仕業なの?」

「いやぁ、大変だったけど、可愛い妻のためだし? 俺いい夫してるなぁ〜」

 離宮過ごしやすくなったろ? とドヤ顔でロイが話すのを見て、アリアの中でブチッと我慢のゲージが振り切れる音がした。

「は? 職務放棄して何寝ぼけたこと言ってるの? はっきり言って頼んでねぇよ」

 と、アリアの感情が振り切れたことで体内の魔力が高まり、淡いピンク色の瞳に勝手に紅と金の煌めきが混ざりはじめる。

「独りよがりマジ迷惑」

 しっかり準備をして臨んでもロイは窮地に立たされ、瀕死の重症を負うのだ。まぁすぐに聖女ヒナの力で回復するのだけど、それはそれとして。

「今すべき調査は離宮の人間じゃないでしょうがっ!! 裏カジノから辿ってさっさとシラバ侯爵と配下のパルデン伯爵の関係と金の流れ調べあげなさいよ!!」

 今やるべきことやらなくてどうするんだとブチ切れして叫ぶアリアを見て、ニヤッと人の悪そうな笑みを浮かべたロイは、

「アリア、その話詳しく」

 ととても楽しそうにそう言った。
 叫び切って肩で息をしていたアリアは、全部洗いざらい吐けっとにこやかに笑うロイを見て、さーっと血の気が引いていき、アリアの瞳も元の色に戻る。

「さて、未来を知っていらっしゃるアリアさん? 詳しくお話聞かせて頂きましょうか?」

「えっと、あの、殿下?」

 ポンッと肩を叩かれて、ロイの方をまじまじと見たアリアに、

「アリアはホントにチョロいな。ちなみにルークも俺の仕込みだから」

 そう言ったロイの言葉で、アリアははめられた事を知った。
 我ながらチョロいと観念したアリアはこの後この件について洗いざらい吐かされた。
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