人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「ルークに拘束されてたんじゃ」
身体を起こしたアリアはそう尋ねる。
「そう。で、やっとさっき目処が立って久方ぶりに解放された。久々に死ぬかと思った」
それなら部屋に戻ってゆっくり休んだ方がいいのではとも思ったが、何かひとりで考えたい時にここに来ると言っていたし、何よりあんな話をしてからの久しぶりの再会で気まずい。
早々に立ち去ろうと決意したアリアはささっと片付けて、
「では、どうぞこちらをお使いください。私はもう引き上げますので」
と笑顔で場所を譲った。そのまま立ち去ろうとするアリアの腕を引いて、一瞬で自分の方に引き寄せたロイは、
「約二月ぶりの再会なのに、相変わらずの塩対応。本物のアリアだ」
そのままぎゅっとアリアの事を抱きしめて、耳元でそう言って笑った。
アリアは驚いてされるがまま髪を撫でられていたが、我に返り離れようともがく。
「まだ1月半も経ってません。っていうか、いきなり抱きつかないでください」
「嫌なら身体強化魔法で逃げたらいいだろ」
「あれは使用制限と制約があるんです! もう、とにかく離してっ」
ばっと身体を離して、文句を言おうと見上げたアリアは間近でロイの顔を見て驚く。
「……なんて、顔してるんですか」
その顔には濃い疲労が浮かんでいて、目の下には暗がりでも分かるほどクマが見え、無理し続けましたとはっきり分かる顔だった。
「だって、アリアに聞いた案件が思いの外ヤバいわ、組織デカいわで、そこから芋蔓式に人身売買と黒魔法の禁術を使う犯罪組織の存在が浮上して来て、駆除に時間かかったんだよ」
裏カジノと侯爵たちに流れる裏金と反乱分子の資金問題じゃなかったのかよ、聞いてないとロイは文句を述べるが、
「え、ちょっと待って。全部解決して来た……とか言わないですよね?」
アリアは人身売買や黒魔法の単語に自分の耳を疑い、聞き返す。
「まだ残務と残党狩り残ってるけど、何? やっぱアリアも現場行きたくなった?」
だから一緒に行こうって誘ったのにと、にやっと笑うロイに、アリアはマジかと固まる。
小説後半部分の見せ場が本編開始3か月前に終わるとかアリなの? とアリアはぐるぐる考えて湖の遠く対岸に目をやる。
「頑張ってきた夫の事を褒めてくれないのか? 相変わらずアリアはつれないなぁ」
固まってしまったアリアが抵抗しないのを良いことに上機嫌でそう言ったロイは、アリアの事を腕の中に収める。
普段なら赤面モノなのだが、アリアの心情としてはもうそれどころではない。
瘴気を生成し魔獣を狂わす黒幕……の黒魔法使い。それがロイによって本編開始前に拘束されてしまった場合、このあと一体どうなるんだろうか、とアリアは非常に心配になる。
(え!? ちょ、ヒロインであるヒナは、ちゃんと異世界転移してくるよね!? え? 大丈夫なの、これ?)
ともはや内心パニック状態である。
「どうした、アリア? 何か言いたい事でも?」
そんなアリアにしれっとそんな事を言うロイに、アリアは盛大にため息をついて。
「…………やり過ぎです、殿下。この後一体どうする気なんですか」
船乗り病解決のために自分がやりすぎた時笑い飛ばしてくれ、しかも後処理をそつなくこなしてくれたロイは、実はかなり懐が深いんじゃないだろうか、なんて事を考えていた。
身体を起こしたアリアはそう尋ねる。
「そう。で、やっとさっき目処が立って久方ぶりに解放された。久々に死ぬかと思った」
それなら部屋に戻ってゆっくり休んだ方がいいのではとも思ったが、何かひとりで考えたい時にここに来ると言っていたし、何よりあんな話をしてからの久しぶりの再会で気まずい。
早々に立ち去ろうと決意したアリアはささっと片付けて、
「では、どうぞこちらをお使いください。私はもう引き上げますので」
と笑顔で場所を譲った。そのまま立ち去ろうとするアリアの腕を引いて、一瞬で自分の方に引き寄せたロイは、
「約二月ぶりの再会なのに、相変わらずの塩対応。本物のアリアだ」
そのままぎゅっとアリアの事を抱きしめて、耳元でそう言って笑った。
アリアは驚いてされるがまま髪を撫でられていたが、我に返り離れようともがく。
「まだ1月半も経ってません。っていうか、いきなり抱きつかないでください」
「嫌なら身体強化魔法で逃げたらいいだろ」
「あれは使用制限と制約があるんです! もう、とにかく離してっ」
ばっと身体を離して、文句を言おうと見上げたアリアは間近でロイの顔を見て驚く。
「……なんて、顔してるんですか」
その顔には濃い疲労が浮かんでいて、目の下には暗がりでも分かるほどクマが見え、無理し続けましたとはっきり分かる顔だった。
「だって、アリアに聞いた案件が思いの外ヤバいわ、組織デカいわで、そこから芋蔓式に人身売買と黒魔法の禁術を使う犯罪組織の存在が浮上して来て、駆除に時間かかったんだよ」
裏カジノと侯爵たちに流れる裏金と反乱分子の資金問題じゃなかったのかよ、聞いてないとロイは文句を述べるが、
「え、ちょっと待って。全部解決して来た……とか言わないですよね?」
アリアは人身売買や黒魔法の単語に自分の耳を疑い、聞き返す。
「まだ残務と残党狩り残ってるけど、何? やっぱアリアも現場行きたくなった?」
だから一緒に行こうって誘ったのにと、にやっと笑うロイに、アリアはマジかと固まる。
小説後半部分の見せ場が本編開始3か月前に終わるとかアリなの? とアリアはぐるぐる考えて湖の遠く対岸に目をやる。
「頑張ってきた夫の事を褒めてくれないのか? 相変わらずアリアはつれないなぁ」
固まってしまったアリアが抵抗しないのを良いことに上機嫌でそう言ったロイは、アリアの事を腕の中に収める。
普段なら赤面モノなのだが、アリアの心情としてはもうそれどころではない。
瘴気を生成し魔獣を狂わす黒幕……の黒魔法使い。それがロイによって本編開始前に拘束されてしまった場合、このあと一体どうなるんだろうか、とアリアは非常に心配になる。
(え!? ちょ、ヒロインであるヒナは、ちゃんと異世界転移してくるよね!? え? 大丈夫なの、これ?)
ともはや内心パニック状態である。
「どうした、アリア? 何か言いたい事でも?」
そんなアリアにしれっとそんな事を言うロイに、アリアは盛大にため息をついて。
「…………やり過ぎです、殿下。この後一体どうする気なんですか」
船乗り病解決のために自分がやりすぎた時笑い飛ばしてくれ、しかも後処理をそつなくこなしてくれたロイは、実はかなり懐が深いんじゃないだろうか、なんて事を考えていた。