引きこもり令嬢は皇妃になんてなりたくない!~強面皇帝の溺愛が駄々漏れで困ります~
プロローグ 守るモノのために臨んだのは……
今日、オヴェール公爵家の引きこもり令嬢、エレスティア・オヴェールは人生最大の節目を迎える。
いや、すべての終わりだ。
先程、生まれてからずっと呼ばれていた『エレスティア・オヴェール』という名がなくなり、エレスティア・ガイザーという名に変わった。
ガイザーとは、この皇国で唯一とある人が持つ姓だ。
侍女たちが、うつむき加減で歩くエレスティアを恭しく奥の寝所へと導く。
「到着いたしました。こちらがご寝所でございます」
ヴェール越しにはっと顔を上げたエレスティアの若草色の瞳に、その場所が映し出される。
彼女は途端に足がすくんだ。
薄暗く落とされた照明、そして天幕が美しく飾りつけられたキングサイズのベッドがある。そこには初夜の準備が完璧に整っていた。
(――ああ、とうとう来てしまった)
エレスティアは、緊張で心臓がどうにかなってしまいそうだった。
そんなことにも気づかず、侍女たちはうっとりとして祝いの言葉を述べていく。
「我が皇帝の一番目の側室に迎えられるなんて、うらやましいですわ」
「お美しいですわよエレスティア様、このハニーピンクの御髪も、大変素晴らしいです。皇帝陛下が来られるまで、ヴェールは外されませんよう」
まるで貢物のようにベッドに座らされ、初夜のための婚礼衣装を裾の先まで整えられてエレスティアは寝所に一人きりにされた。
見た目も整えられたのは、今から入室する〝皇帝〟のためだ。
エレスティアは震え上がる。
とうとう、皇帝第一側室として初夜を迎えることになってしまった。もし、この初夜で妊娠してしまったら、身分や家柄からしても彼女が自動的に皇妃へと繰り上がるだろう。
(皇妃にだけはなりたくないっ)
二度と、前世のような愛されない日々を過ごしたくない。
十七歳の彼女は、前世で、十五歳で嫁いでから十八歳で毒によって死ぬまでの〝妃〟だった頃を思い、体の震えを止められなかった。
いや、すべての終わりだ。
先程、生まれてからずっと呼ばれていた『エレスティア・オヴェール』という名がなくなり、エレスティア・ガイザーという名に変わった。
ガイザーとは、この皇国で唯一とある人が持つ姓だ。
侍女たちが、うつむき加減で歩くエレスティアを恭しく奥の寝所へと導く。
「到着いたしました。こちらがご寝所でございます」
ヴェール越しにはっと顔を上げたエレスティアの若草色の瞳に、その場所が映し出される。
彼女は途端に足がすくんだ。
薄暗く落とされた照明、そして天幕が美しく飾りつけられたキングサイズのベッドがある。そこには初夜の準備が完璧に整っていた。
(――ああ、とうとう来てしまった)
エレスティアは、緊張で心臓がどうにかなってしまいそうだった。
そんなことにも気づかず、侍女たちはうっとりとして祝いの言葉を述べていく。
「我が皇帝の一番目の側室に迎えられるなんて、うらやましいですわ」
「お美しいですわよエレスティア様、このハニーピンクの御髪も、大変素晴らしいです。皇帝陛下が来られるまで、ヴェールは外されませんよう」
まるで貢物のようにベッドに座らされ、初夜のための婚礼衣装を裾の先まで整えられてエレスティアは寝所に一人きりにされた。
見た目も整えられたのは、今から入室する〝皇帝〟のためだ。
エレスティアは震え上がる。
とうとう、皇帝第一側室として初夜を迎えることになってしまった。もし、この初夜で妊娠してしまったら、身分や家柄からしても彼女が自動的に皇妃へと繰り上がるだろう。
(皇妃にだけはなりたくないっ)
二度と、前世のような愛されない日々を過ごしたくない。
十七歳の彼女は、前世で、十五歳で嫁いでから十八歳で毒によって死ぬまでの〝妃〟だった頃を思い、体の震えを止められなかった。
< 1 / 2 >