犬飼くんはむずかしい


「ああいうの、俺が一番嫌いなタイプ」



 ……まずい、先入観の方が勝ってしまっている。けれど、永上くんは持ち前のキャラで損してしまっているわけで、永上くん自身が嫌われているということではないらしい。とりあえず、

「……と、言いますと?」

 さりげなく、永上くん似の人と何があったのかを聞いてみると、犬飼くんは不満気に息を吐いた。


 そして、

「裏切られただけ」

 と、理由を教えてくれた。



 ――裏切られただけ……なんとも深い言葉だ。これ以上は聞かないでと言いたそうに「遠慮なく貰うわ。ノート代だけでも払うから。いくらだった?」と、質問された。



「いや、それは家に大量に余ってたノートを使ったたけだから大丈夫だよ。気にしないで!」


「……ん、ありがとう」



 犬飼くんはノートを片手にほんのり笑みを浮かべた。もしかして犬飼くんも永上くんのようにクラスの皆とすぐに仲良くなれるかもしれない。その素質は十分にある。

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