犬飼くんはむずかしい
そう思っていたけど、犬飼くんは私以外の人と会話をしようとしない。クラスの子が話しかけても、
「うっせぇ、話しかけんな」
と、いうようにあしらってしまう。
すぐにクラスの子と仲良くなれるとばかり思っていたのに、私の勘は外れてしまった。
……先生の言っていた通り何かしらのクセが出ているのだろうか。
ある日の休み時間、
「上野さん」
――林さんから声を掛けられた。廊下で話しがあるらしく、後をついていくことにした。
林さんは普段大人しい子で、眼鏡を愛用している女子だ。いつもは自分の席で読書をしているのに、今日は何の用なんだろうか。
廊下へと出るなり、「急にごめんね」と、申し訳無さそうに会話をしてきた林さん。「大丈夫だよ」と、安心させる。
「犬飼くんのことなんだけど……」
「え? 犬飼くん?」
「うん。上野さんって、犬飼くんと知り合いなの? それとも……付き合ってる……?」