犬飼くんはむずかしい


 ――日が経つにつれ、犬飼くんの噂はあることないこといいように流れてしまっていた。



 どうにかできないんだろうか。



 そういえば、先生が「少しクセがある」と言っていたような気がする。今からでも先生にその『クセ』を聞きに行こう。



 昼休みになり、急ぎ職員室へと向かった。担任の先生はプリンターで何やら印刷をしている最中だった。


「先生、犬飼くんのことでちょっといいですか?」


「あ、ああ」



 思い当たる節がある感じで、先生は困った顔を私に向けた。



 プリンターのコピーを中断させるわけではなく、

「……で、なんだ?」

 忙しそうに準備をしながら私に質問をした。



「はい、単刀直入に言いますと、犬飼くんが私以外の人と会話をしません。で、クラスの中で犬飼くんの良くない噂が独り歩きしてしまっていて。先生は以前、犬飼くんは『少しクセがある』と言っていました。そのクセってなんですか?」



 私の質問に先生は、まあ落ち着け、と、私の肩をポンと叩いた。



 ……犬飼くんの悪い噂が出回っているのに、落ち着いていられるわけがない。

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