犬飼くんはむずかしい
先生は顔を歪ませ、
「後ろの席って、確か永上だっただろう。上手く馴染めると思わなくてなぁー」
困ったように、眉間に皺を寄せている。
永上くんはコミュニケーション能力が高い。場を明るくするのも得意で、どちらかというとクラスのムードメーカー的存在だ。これほど適任に成り得る人はいないだろう。
「先生、永上くんはクラスの皆と上手く仲良くしていますし、私なんかより何倍も友達多いです」
「うーん、永上がそういうヤツだっていうのは俺も分かっているんだが……まあ、先生の勘だ。よろしく頼む」
私がいくら説明しても、先生は分かってくれなかった。
いくら私が永上くんの方が適任だと思っていても、先生が頷かないなら仕方がない。「分かりました」と返事をすると、先生は息を吐いて安堵した。
「犬飼は少しクセのあるヤツだから助かるよ。何かあったら遠慮なく相談してくれ」
「わ……分かりました」