犬飼くんはむずかしい
結局リストが私の元へ戻ってきたのは、放課後になってからだった。「俺なりに付け足してみた」と書いてくれた文章は、さすがはクラスの中心人物といった感じだ。一人一人の特徴を短く的確にまとめられていた。
私の欄は「できればもっと心を開いてほしい」というような、願望的なものが書かれてあった。
――心を開くもなにも、まだ一緒のクラスになって一週間だ。そんな簡単に人に隙ばかり見せて、少しだけ永上くんのことが心配になった。
*
翌日、一週間分の授業を書き写したノートとリストを持って、いざ登校。教室に入ろうとすると、私の隣の席には黒髪男子が机に顔を伏せた状態で席に着いていた。
あの人が犬飼くん……
ドキドキしながら自分の席へ向かおうとしたその瞬間、「うーえーのー!」と、大声で私の名前を呼ぶ永上くんが視界に入った。教室の隅に蹲っていた。