犬飼くんはむずかしい



「永上くんが付け足しで書いてくれたあのリストを渡したら、『後ろの席のヤツ、いい人だったんだ』って理解してもらえるって」



「んなもん渡したら破り捨てられるに決まってる! アイツのために色々してたことは俺も分かってるけど、悪いことは言わない、上野も犬飼クンには関わらない方がいい」



 今ならまだ間に合う的な表情で、私を必死に止める永上くん。正直言って余計なお世話だ。



 自分が仲良くできなかったからって、他人にまで自分の価値観を押し付ける永上くんにイラッとしてしまった。



「私、永上くんのそういう決めつけ大嫌い」



 ――ひどい言葉を言ってしまったと同時に、私が一週間前先生に、

「犬飼くんの後ろの席の男子に頼むとかした方が、それを機に友達になるかもしれないですよ」

 と言ったことを思い出した。



 永上だったら、絶対に犬飼くんとも仲良くなれると思っていた。



 けれど、これも価値観からの押し付けだったことに気づかされた。


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