犬飼くんはむずかしい


 永上くんの元を離れ、自分の席へと向かう。



 もしかしたら永上くんのようにボロクソ言われるかもしれないけど、言われたらそのとき考えればいい。



 イスに座り、犬飼くんに話しかけようと覚悟を決めた。



「――あの、犬飼くん。私、隣の席の上野梓。よろしくね」



 無反応か塩対応でもされるかと思ったけど、犬飼くんは伏せていた顔を上げてくれた。そして私に視線を向けてくれた。



 ――ビックリするほどに顔面強のイケメンだった。ピアスも凄いんだっけと、耳を見てみるもピアスは一つも付いていない。



「あれ、犬飼くん、ピアスは?」



 顔の良さよりピアスが気になってしまった私はふと、問いかけた。



「この学校ってビアスはダメなんだろ。髪だって染めたらダメってあったから金髪から染め直してきたし」



 金髪に大量のピアス姿を想像するだけで怖すぎて身震いした。制服はネクタイをしていなかったり、シャツが出ていたりしているけど、明らかな校則違反はちゃんと守るらしい。



 ――なんだ。


 全然、『犬飼クン無理』じゃないじゃん。


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