悪役令嬢と臆病な子犬

バラの令嬢

渚に病院と言われるところに連れて行かれ、検査というものをされた。私がヴィニータとして生まれ育った世界で治癒士が行っているラクフィルというものに類似していた。治癒士が月の雫の結晶を用いて何の病気を患っているか調べ上げていく方法だ。

 特に体には異常はないと言われたけれど…。

医者=治癒士から詳しい説明があると渚は連れてかれ、1人座って彼を待っていた。

チラッと窓ガラスに映る自分の姿に未だ慣れない。

 私はこのまま美緒として生きていくのだろうか…。

そんな未来の事考えながらも、私はなぜ処刑されなければならなかったのか…。と、心は過去に囚われていた。

 姉とファビオ様はいつから思い合っていたのかしら…。

姉は私とファビオ様の婚約を知った後は暫く何故長女である自分ではないのか。と父に詰め寄っていた。
貴族とし地位や政略を目的とした結婚は当たり前と思っていたので、ファビオ様から婚約の申し出があった時は愛だの恋だの何も考えていなかった。そもそも私には婚約が決まったと決定事項として父から聞いていたので、自分の婚約につい完全に蚊帳の外にいた。

それでも、定期的に行われるお茶会やお食事の場でのファビオ様はとても優しく紳士的な方だったので、何かしら私のことを好いてくださっているのだと思っていたのだ。

 やはり、姉に相談したことが原因だったのかしら…。

他に思い当たることがなかった。

国王の悪事を姉に伝えた後、姉はどうしたのだろう。そこに私が反逆罪として囚われた理由がある気がしていた。

「お待たせ。」

渚が医者との話しが終わり戻ってきた彼は私のことを美緒ではなくヴィニータと呼ぶようになってきた。
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