悪役令嬢と臆病な子犬
誰かが優しく頭を撫でている。それから首筋に柔らかく暖かいものが触れたかと思うと今度は唇に優しく口づけをされている。
「…美緒。…お前が好きだ。」
男性の声がし、切なく愛を囁く。聞こえてきた声が誰なのか記憶を探るが思いつく顔はなかった。自分が置かれた状況がわからずにいると服の中に彼の手が滑り込んできた。
口づけは深くなり彼の舌が口内で動き回る。
先ほどまで断頭台にいた。ここはあの世なのか…。
力の入らない体と頭でボーっとしていると彼の手が内ももにたどり着いたところで意識がはっきりとしてきた。
「いけませんわっ!!!」
両手で男の胸あたりを押し返すが、胸板が厚くがっしりとした体はビクともしない。
「何それ?そういうプレイ?」
目を開けると黒髪の美男子が自分の上に覆いかぶさっていた。
「美緒のここ、めっちゃトロトロになってる…。俺のも触って…。」
「…んぁあ。」
彼に触られて無意識に声がもれる。男は私の手を取って自分のものを握らせた。
「ダメです!これ以上はいけません!!!」
慌てて手を離し、覆い被さる彼の腕の隙間から逃げた。牢屋の様な狭い部屋に簡易的なベッドと文机が置かれていた。どこに逃げたら良いかわからず、取り敢えず壁を背に男との距離をとった。
見知らぬ男性のものを直接触ってしまった事を思い出し顔が赤くなる。
「えっ?その設定続けるの??」
黒い髪に黒い瞳。伝説に聞く魔族の様な出立ちそのものだった。
「あなたは…、その…、魔族なのですか?」
私の発言に男は目を丸く見開いて驚いていた。
「美緒、あんなメッセージ送っておきながら今度はなんの冗談?これ以上は付き合いきれねぇよ。」
男はベッドの上に胡座をかいて座り、不満な表情を見せる。
「わっ…私は、ウォルダム家次女、ヴィニータ・イサドレア・ウォルダムと申します。」
丁寧にカーテシーにて挨拶をしようとしたが自分が身につけているドレスの裾の短さに驚く。
なぜこの様な短い服を纏っているの!?
自分の服装を改めて見つめて驚く。そしてこの部屋もよく見れば見たことがないものばかりだ。じーっと部屋の中を見つめていた。
「何だよそれ…。お前どうしたの?」
「こ…ここは一体どこなのでしょうか?私は死んだのですよね?」
「はっ? 意味わかんねー…。死ぬなんて冗談でも言うなよ。」
ふと、文机の上を見ると手紙の様な封筒が置かれていた。
「……渚へ?」
封筒には宛名が書かれており、見たことがない文字だったが不思議と読むことができた。
そっと、その封筒を手に取ってみたのだが男に奪い取られてしまった。
男は慌てた様子で封筒を開けると中の手紙を読み始めた。しばらく読み進めると目を真っ赤にし涙を堪えながら口元に手を当てた。
そして視線を文机の上に写し、机の上にあるカップと銀色の何かわからない薄い物体を手にしてからこちらを見た。
「美緒…。どういう事だ?なぜ今まで黙ってた??」
「先程も申し上げましたが、私は、ウォルダム家次女、ヴィニータ・イサドレア・ウォルダムと申します。どなたかとお間違えではございませんか?」
「俺がお前を間違えるわけ無いだろ……。」
彼はベッドから立ち上がるとおもいっきり私を抱きしめた。
「お止め下さいませ!」
力一杯に彼を突き飛ばした。
「無礼でございます。紳士たるもの先ずは名乗るのが筋ではございませんか?」
「今さら名乗れって?お前俺の事なんでも知ってんじゃねーか。」
「全くもって存じ上げません。」
「さっきからホント何なんだよ…。『私は山本 渚と申します。あなた様とは幼少の頃より共に勉学を励んだ仲にございます。』」
片膝をつき片手を胸の前に置き頭を下げながらやっと彼は名乗ってくれた。
「これで満足か?」
「渚って先ほどの手紙の宛名の方ですね。あの手紙には何と書かれていたのでしょう?そして、私は何故ここにいるのでしょう??」
「お前、ホント何もわからないのか??」
「はい。断頭台に送られ、気が付いたらこちらにおりりました。」
「断頭台って…。お前犯罪者なのか!?」
「いえ、婚約者である第一王子と信頼していた姉に嵌められたようです。」
私の言った事を信じてくれたのかわからないが、渚様は暫く黙って何かを考えている様だった。
それからゆっくりとため息をつくと話し始めた。
「ここはお前…美緒の家だ。君の名前は美緒と言う。君と俺は…その…恋人の関係だ。」
「私の名前は美緒ではございません。それに私と渚様が恋人でございますか?一体どう言う事なのでしょうか…。」
「渚様って何だよ…。いつも通り『渚』って呼べよ。そうだ、こっちこい。」
腕を掴まれて部屋を出るとソファーのある部屋があり、どこか小さなスペースへと連れて行かれた。パチっと言う音と共に灯りがつくと正面に大きな鏡が置かれていた。
「えっ……。」
鏡に写っていたのは見慣れたプラチナブロンドの長い髪に薄紫の瞳ではなく自分の姿とは違った黒く短い髪に黒い瞳の幼い印象の女性だった。
「……これは一体どういうことなのでしょう??」
「どこからどう見てもお前は美緒だ。」
渚は私の後ろにピッタリと立って小さな声で言った。そして、そのままそっと抱きしめると首筋にキスをした。
「俺が悪かった。お前に嫉妬させてやりたかっただけなんだ。俺が好きなのは美緒、お前だけだ。」
彼の大きくゴツゴツとした手は直ぐに腰の辺りから服の下へと潜り込み胸の膨らみを包み込む。
「どうかお止め下さいませ。私は美緒という方ではございません。」
体をねじって彼の手から離れる。
「…薬のせいか?病院に行くぞ。」
「病院とは?」
「いいからついて来い。」
そう言うと渚は何もわからない私に上着を着せると靴を履かせてこの狭い部屋から外へと連れ出した。
「…美緒。…お前が好きだ。」
男性の声がし、切なく愛を囁く。聞こえてきた声が誰なのか記憶を探るが思いつく顔はなかった。自分が置かれた状況がわからずにいると服の中に彼の手が滑り込んできた。
口づけは深くなり彼の舌が口内で動き回る。
先ほどまで断頭台にいた。ここはあの世なのか…。
力の入らない体と頭でボーっとしていると彼の手が内ももにたどり着いたところで意識がはっきりとしてきた。
「いけませんわっ!!!」
両手で男の胸あたりを押し返すが、胸板が厚くがっしりとした体はビクともしない。
「何それ?そういうプレイ?」
目を開けると黒髪の美男子が自分の上に覆いかぶさっていた。
「美緒のここ、めっちゃトロトロになってる…。俺のも触って…。」
「…んぁあ。」
彼に触られて無意識に声がもれる。男は私の手を取って自分のものを握らせた。
「ダメです!これ以上はいけません!!!」
慌てて手を離し、覆い被さる彼の腕の隙間から逃げた。牢屋の様な狭い部屋に簡易的なベッドと文机が置かれていた。どこに逃げたら良いかわからず、取り敢えず壁を背に男との距離をとった。
見知らぬ男性のものを直接触ってしまった事を思い出し顔が赤くなる。
「えっ?その設定続けるの??」
黒い髪に黒い瞳。伝説に聞く魔族の様な出立ちそのものだった。
「あなたは…、その…、魔族なのですか?」
私の発言に男は目を丸く見開いて驚いていた。
「美緒、あんなメッセージ送っておきながら今度はなんの冗談?これ以上は付き合いきれねぇよ。」
男はベッドの上に胡座をかいて座り、不満な表情を見せる。
「わっ…私は、ウォルダム家次女、ヴィニータ・イサドレア・ウォルダムと申します。」
丁寧にカーテシーにて挨拶をしようとしたが自分が身につけているドレスの裾の短さに驚く。
なぜこの様な短い服を纏っているの!?
自分の服装を改めて見つめて驚く。そしてこの部屋もよく見れば見たことがないものばかりだ。じーっと部屋の中を見つめていた。
「何だよそれ…。お前どうしたの?」
「こ…ここは一体どこなのでしょうか?私は死んだのですよね?」
「はっ? 意味わかんねー…。死ぬなんて冗談でも言うなよ。」
ふと、文机の上を見ると手紙の様な封筒が置かれていた。
「……渚へ?」
封筒には宛名が書かれており、見たことがない文字だったが不思議と読むことができた。
そっと、その封筒を手に取ってみたのだが男に奪い取られてしまった。
男は慌てた様子で封筒を開けると中の手紙を読み始めた。しばらく読み進めると目を真っ赤にし涙を堪えながら口元に手を当てた。
そして視線を文机の上に写し、机の上にあるカップと銀色の何かわからない薄い物体を手にしてからこちらを見た。
「美緒…。どういう事だ?なぜ今まで黙ってた??」
「先程も申し上げましたが、私は、ウォルダム家次女、ヴィニータ・イサドレア・ウォルダムと申します。どなたかとお間違えではございませんか?」
「俺がお前を間違えるわけ無いだろ……。」
彼はベッドから立ち上がるとおもいっきり私を抱きしめた。
「お止め下さいませ!」
力一杯に彼を突き飛ばした。
「無礼でございます。紳士たるもの先ずは名乗るのが筋ではございませんか?」
「今さら名乗れって?お前俺の事なんでも知ってんじゃねーか。」
「全くもって存じ上げません。」
「さっきからホント何なんだよ…。『私は山本 渚と申します。あなた様とは幼少の頃より共に勉学を励んだ仲にございます。』」
片膝をつき片手を胸の前に置き頭を下げながらやっと彼は名乗ってくれた。
「これで満足か?」
「渚って先ほどの手紙の宛名の方ですね。あの手紙には何と書かれていたのでしょう?そして、私は何故ここにいるのでしょう??」
「お前、ホント何もわからないのか??」
「はい。断頭台に送られ、気が付いたらこちらにおりりました。」
「断頭台って…。お前犯罪者なのか!?」
「いえ、婚約者である第一王子と信頼していた姉に嵌められたようです。」
私の言った事を信じてくれたのかわからないが、渚様は暫く黙って何かを考えている様だった。
それからゆっくりとため息をつくと話し始めた。
「ここはお前…美緒の家だ。君の名前は美緒と言う。君と俺は…その…恋人の関係だ。」
「私の名前は美緒ではございません。それに私と渚様が恋人でございますか?一体どう言う事なのでしょうか…。」
「渚様って何だよ…。いつも通り『渚』って呼べよ。そうだ、こっちこい。」
腕を掴まれて部屋を出るとソファーのある部屋があり、どこか小さなスペースへと連れて行かれた。パチっと言う音と共に灯りがつくと正面に大きな鏡が置かれていた。
「えっ……。」
鏡に写っていたのは見慣れたプラチナブロンドの長い髪に薄紫の瞳ではなく自分の姿とは違った黒く短い髪に黒い瞳の幼い印象の女性だった。
「……これは一体どういうことなのでしょう??」
「どこからどう見てもお前は美緒だ。」
渚は私の後ろにピッタリと立って小さな声で言った。そして、そのままそっと抱きしめると首筋にキスをした。
「俺が悪かった。お前に嫉妬させてやりたかっただけなんだ。俺が好きなのは美緒、お前だけだ。」
彼の大きくゴツゴツとした手は直ぐに腰の辺りから服の下へと潜り込み胸の膨らみを包み込む。
「どうかお止め下さいませ。私は美緒という方ではございません。」
体をねじって彼の手から離れる。
「…薬のせいか?病院に行くぞ。」
「病院とは?」
「いいからついて来い。」
そう言うと渚は何もわからない私に上着を着せると靴を履かせてこの狭い部屋から外へと連れ出した。