悪役令嬢と臆病な子犬
定刻になるとファビオ様が屋敷に迎えに来た。
自分が住んでいる城での舞踏会なのにわざわざ迎えに来てくれるなんて、とても紳士だと思う。なのになぜ彼は姉を選ぶ結果になるのだろう…。不思議で仕方がなかった。
お城の大広間に到着すると国王からの挨拶が行われ、盛大な音楽と共に舞踏会が始まった。
社交ダンスなんてしたことが無いので戸惑ったが、ヴィニータの体がしっかりとリズムを覚えていたおかげで難なく踊りきることができた。
1曲目のダンスが終わったところで白髭の家臣がファビオ様に国王が呼んでいると声を掛けた。
「ヴィニータ、申し訳ないが少しこの場を離れなければならない。直ぐに戻るから待っていてくれ。そうだ、従兄弟のアルベルトに相手をさせよう。」
そう言うと先ほどの白髭の家臣を呼んでアルベルトを連れてくるようにと命じた。
別に一人でも大丈夫なのに…。
「アルベルト、すまないが私がこの場を離れている間、私の婚約者であるヴィニータの相手を頼みたい。」
「承知しました。」
「では、ヴィニータ直ぐに戻るよ。」
そう言うとファビオ様は私の手を取って指先にキスをし、国王の下へと向かった。
従兄弟のアルベルト…。
小説には登場しなかった人物だ。
「ウォルダム公爵令嬢、一曲ご一緒させていただく栄誉を頂けませんか?」
「はい、私でよろしければ。」
そう返事をすると一瞬だけアルベルトは表情をしかめた。
あれ? わたし、何か間違えた?
ダンスの曲が始まり、アルベルトが手を差し伸べるのでその手に自分の手を重ねてダンスを始めた。
ダンスで体を密着させるタイミングでアルベルトが耳元で囁いた。
「あなたは一体誰でしょうか?」
びっくりして体が一瞬固まった。
「わ…私はウォルダム家の次女ヴィニータ・イサドレア・ウォルダムでございます。」
「見た目はウォルダム公爵令嬢ですが、中身が違う。そうではないですか?」
「…どうしてそれを?」
ここまで誰も気づかなかったのにどうしてこの短時間で彼は気が付いたのだろう…。
「私は第一王子の従兄弟であり護衛騎士でございます。そしてウォルダム公爵令嬢に恋する哀れな男でございます。恋焦がれた女性を見間違えるわけがございません。仕草の一つ一つを全て記憶しております。」
ヴィニータをそこまで思う男性がいたなんて…。
ダンスが終わると他の誰にも聞かれない様にバルコニーへ出た。
自分が住んでいる城での舞踏会なのにわざわざ迎えに来てくれるなんて、とても紳士だと思う。なのになぜ彼は姉を選ぶ結果になるのだろう…。不思議で仕方がなかった。
お城の大広間に到着すると国王からの挨拶が行われ、盛大な音楽と共に舞踏会が始まった。
社交ダンスなんてしたことが無いので戸惑ったが、ヴィニータの体がしっかりとリズムを覚えていたおかげで難なく踊りきることができた。
1曲目のダンスが終わったところで白髭の家臣がファビオ様に国王が呼んでいると声を掛けた。
「ヴィニータ、申し訳ないが少しこの場を離れなければならない。直ぐに戻るから待っていてくれ。そうだ、従兄弟のアルベルトに相手をさせよう。」
そう言うと先ほどの白髭の家臣を呼んでアルベルトを連れてくるようにと命じた。
別に一人でも大丈夫なのに…。
「アルベルト、すまないが私がこの場を離れている間、私の婚約者であるヴィニータの相手を頼みたい。」
「承知しました。」
「では、ヴィニータ直ぐに戻るよ。」
そう言うとファビオ様は私の手を取って指先にキスをし、国王の下へと向かった。
従兄弟のアルベルト…。
小説には登場しなかった人物だ。
「ウォルダム公爵令嬢、一曲ご一緒させていただく栄誉を頂けませんか?」
「はい、私でよろしければ。」
そう返事をすると一瞬だけアルベルトは表情をしかめた。
あれ? わたし、何か間違えた?
ダンスの曲が始まり、アルベルトが手を差し伸べるのでその手に自分の手を重ねてダンスを始めた。
ダンスで体を密着させるタイミングでアルベルトが耳元で囁いた。
「あなたは一体誰でしょうか?」
びっくりして体が一瞬固まった。
「わ…私はウォルダム家の次女ヴィニータ・イサドレア・ウォルダムでございます。」
「見た目はウォルダム公爵令嬢ですが、中身が違う。そうではないですか?」
「…どうしてそれを?」
ここまで誰も気づかなかったのにどうしてこの短時間で彼は気が付いたのだろう…。
「私は第一王子の従兄弟であり護衛騎士でございます。そしてウォルダム公爵令嬢に恋する哀れな男でございます。恋焦がれた女性を見間違えるわけがございません。仕草の一つ一つを全て記憶しております。」
ヴィニータをそこまで思う男性がいたなんて…。
ダンスが終わると他の誰にも聞かれない様にバルコニーへ出た。