アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「扉に耳をくっつけてしまいました」
「わかるわ」

 クレアはお上品で清楚な感じなのに、ちょっと意外だった。でも、わたしでもそうしたでしょうから同意した。

「意識を集中し、聴覚と感覚で寝室内の様子をうかがいました。すると、なんてことなのでしょう……」
「なに? なにがわかったの?」

 うつ伏せの状態から両腕をバネにして飛び起きてしまった。

「イタタタタ」

 背中や腕にピリッとした痛みが走った。

「奥様、無理をなさってはいけません」
「わかっているわよ、クレア。そこは反省するから、続きを教えて」

 寝台の端までずって行き、彼女の両腕をつかんだ。

 続きが気になって仕方がない。

 もしかして、そういう音がきこえた?

 そうとしか考えようがない。
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