アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 覚えがあるというよりかは、なじみがあるといった方がいいかしら。

 そう認識した瞬間、血の気がひいた。

「奥様、大丈夫ですか?」

 すぐにクレアが心配してくれたほど、顔が真っ青になったのが自分でもわかった。

「無礼すぎますぞ。これ以上勝手をなさるというなら、こちらもそれなりの対応をさせていただきます」

 執事役のジェフの警告が不気味に耳にまとわりつく。

「クレア、行かなきゃ」

 彼女を押しのけるようにして寝台からおり、手を伸ばして近くにある椅子の背からカーディガンをとった。素早くそれを部屋着の上に羽織り、歩きだす。
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