アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 負けてはいけない。これまで、いったいどれだけ臆病でいたの? 彼らのあらゆる類の暴力を怖れ、挫けてきたの?

 ひとりぼっちで耐え忍んできたというの? 見て見ぬふりを、それから気付かないふりをしてきたというの?

 自分の心を偽り、隠し、蓋をしてきたというの?

 しかし、いまは違う。いまは以前とは違う。

 偽りといえど、わたしには家族がいる。夫がいて、子どもたちがいて、義理の父親がいて、使用人や猫までいる。

 いまはひとりぼっちではない。

 家族がいる。みんながいる。

 だから、なにも怖れる必要はない。

 耐え忍ぶ必要もない。

 アッシュフィールド公爵夫人として、堂々としていればいい。

 コリンの妻として、誇りと自信を持つのよ。
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