アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 結局は、そんなろくでなしの言うことに従うしかない。

 ヘンリーとノーラの小さいけれど立派な背に近づくと、うしろから二人を抱きしめた。

「二人とも、ありがとう。すごくうれしいわ。だけど、ケガをしては元も子もない。ジェフとクレアといっしょにいて」
「母上、こんな奴ら……」

 ヘンリーは言いかけて、「こんな奴ら」というのがわたしの身内だということを思い出したらしい。ハッとして口を閉じてしまった。

「そうね。あなたの言う通りよ」

 その彼に微笑むと、二人の肩を押してうしろにいるジェフとクレアの方に押しやった。

 そして、あらためて叔父と対峙した。
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