アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 嫌だわ。きっと、これは罠なのよ。これでよろこび勇んで「はい」なんて答えようものなら、谷底に突き落とされるようななにかが起こるに違いない。

 だけど、もしも彼が本気で言っているのなら?

 迷った。しかし、それも一瞬のことだった。

「一つ条件があるの」
「なに?」
「おれ様はやめてちょうだい。ほんとうの夫婦になるのだったら、せめて他の夫婦同様妻を敬い尊重してちょうだい。けなしたり揶揄ったりするのではなく、ね。この条件をのんでくれるのなら、ほんとうの夫婦になってもいいわ」
「努力する。これでいいだろう?」
< 293 / 303 >

この作品をシェア

pagetop