アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「ああ、くそっ! 白状するよ。きみを抱きたかった。抱きたくて仕方がなかった。だが、出来なかった。その理由は、さっき言った通りだ。だから、よこしまな考えを吹き飛ばす為に寝台の上で腕立て伏せをした。それこそ、数えきれないほどの回数だ。しまいには、疲れて眠くなってきた。だから、きみの隣に横になって眠った。きみがもし、『わたしと寝たの?』と尋ねたのなら、答えは『イエス』だった。『寝た』、という行為そのものの意味は違うけどな」

 コリンは、真っ赤な顔で説明というか言い訳をした。そのコリンを見ながら、笑いが込み上げてきた。

 どうして腕立て伏せなの? しかも床の上ではなく、寝台の上でしたの?

 そんなツッコミたいところは抜きにして、彼のことが愛おしくなった。

 笑い始めると、伝染して彼も笑い始めた。
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