アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 手の甲から彼女に視線を移した。すると、彼女はお座りして先程わたしの両手をひっかいたばかりの右前脚の爪をペロペロなめている。

 その彼女を、コリンがなでなでしている。

「おばさん、そういうのを自業自得というんだよね」
「こいつは面白い。最高のひっかき技だ」

 何度目かの人生をループ中のヘンリーと天然ボケのクレイグは、呑気に批評している。

「呆れたな、ミヨ。だれか手当てをしてやってくれ。とにかく、四人ともさっさと礼服に着替えて来い。そして、行ってくるんだ。隣の屋敷にな」

 バーナードの呆れた表情と声音に、メイド役の一人であるクレアが駆けよって両手を診てくれた。

 って、お葬式ってお隣さんなわけ?

 ここからお隣さんを見るかぎりでは、木々が鬱蒼と生い茂っていて廃墟のようにしか見えない。
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