アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~

足を挫いて……

「ったく、ただ歩くことすら出来ないのか?」

 前を歩くコリンのつぶやきがきこえたかと思うと、いきなり立ち止まった。その想定外の動きに、足を止めることが出来ず、彼にぶつかてしまった。

「きゃあっ」

 ぶつかった拍子によろめき、反射的に左足を地につけふんばろうとした。

 が……。

 自分で自分が情けなくなった。左足は身体を支えるどころか、挫いてしまったのである。

「あ、あらららら……」

 自分でもお見事としか言いようがない。そのままうしろへスウッと倒れてゆく。

 このまま背中を「ドシン」と地に打ちつけるのが容易に想像出来る。

 が、空を見上げた状態で体が浮いた。

 厳密には、倒れかけている途中で停止した。
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