アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~

「マイスイートハート」ってだれのこと?

「そのオルコット男爵家の見てくれ残念レディが、ここでなにをしているわけ?」

 レディの一人が言ったけれど、わたしのニックネームがどんどん増えていく。

「弔問よ」

 簡潔かつ堂々と応じた。

 ほんとうのことだから、ムダに胸を張って言える。


「弔問? なんの縁で? 胡散臭いな。兄貴が死んで借金を揉み消してもらおうとでという算段か? それで、様子を見に来たとか?」

 強面が推測をぶってきたけれど、ほんとうにそうならろくでなしの叔父は救いようのないバカよ。

「借金はなくならんぞ。せっかく来たんだ。色気は期待出来んが、雑用なら出来るだろう? とりあえず、この屋敷を掃除しろ。ちゃんと住めるようにピッカピカにするんだ」
「イヤよ。わたしは、弔問客よ。それなりに敬意を払ってちょうだい」

 自分でも驚いた。

 強面に向ってエラそうな態度をとってしまったのである。
< 56 / 303 >

この作品をシェア

pagetop