アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 彼は、小さく舌打ちをした。それから、執務机の上から紙片を一枚つかみ、こちらにやって来た。

 クレイグは、素知らぬ顔でわたしの横に腰かけている。

 コリンはローテーブルの横に立つと、わたしを見おろしてきた。その青色の目は、夏の空のようだとどうでもいいことを思ってしまった。

 彼はわたしと視線を合わせたまま、手に持っている紙片をローテーブルに叩きつけた。

「これはきみの、いや、きみの家の借金ではないのか?」

 そして、やはり視線(それ)を合わせたまま静かに尋ねてきた。

 彼から視線をそらせると、叩きつけられた紙片にそれを落とす。

 どうやら、その紙片は「借用書」らしい。

 その一語を見た瞬間、コリンの問いの答えがわかった。

 中身を読んでも仕方がない。そこは割愛し、文の末尾、つまり署名まで飛ばした。
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