アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「バイロン・オルコットは、ずいぶんと派手に金貨を借りているんだな」

 署名がだれのものか認めた瞬間、コリンの鋭い声が飛んできた。

「ええ、そうね。だから、わたしがここにいるわけ」

 正直、うんざりだわ。

 彼を睨み上げる。

 この後の展開は、想像するまでもない。

 どうせ借金まみれのわたしは、ここにいる資格はないと宣告するのよ。この偽りの夫婦、家族の一員としてふさわしくないと叩きつけるのよ。

 ここから追いだされてしまう。

 その事実は、わたしを叩きのめした。

 ショックと表現するにはなまやさしいすさまじい衝撃に襲われた。

 座っていなければ、ふらついて今度は右足を捻挫したかもしれない。
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