アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「遺さなかったよ。少なくとも、遺書などは遺していない。それに、ノーラの母親は男爵の正式な妻ではなかった。だから、厳密には彼女が正式に受け継ぐには手続きやら承認やらが必要だ。だが、あのくそったれどもにも受け継ぐ資格はない。男爵も含め、連中はまともな金貸しではない。何十人という人が、直接、間接を問わず殺されている。男爵を見ただろう? 死者は冒涜したくないが、あんな死に方をして当然だったのかもしれない。もっとも、彼をあんな目にあわせたのは、彼に借金をしたことで追い詰められ、命を絶ったり殺された被害者ではないがな。論点がズレたが、逆に言えば、煩雑な手続きなどをすませば、彼女が受け継ぐことが出来る」
「わたしも死者は冒涜したくないけれど、ノーラの様子を見れば、男爵があんなふうに死んだのは『ざまあみろ』だし、まわりまわった結果だと心から思う。彼女にとってもよかったのかもしれない」

 言葉をいったん止め、つぎの言葉を模索する。
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