Special Edition ②
ゴルフ場に到着すると、スタッフが駆け寄って来た。
ここは、国内に幾つかある一条グループのゴルフ場だからだ。
マークはゴルフ好きでも知られていて、数年前からグループ内で情報の共有をし、2時間前にマーク夫妻がフラッと来たと連絡を受けたのだ。
「マークは?」
「9ホール目を終える所です」
「クラブハウスで待つとするか」
ハーフを終えて昼休憩をするはず。
俺はクラブハウスのスタッフに指示を出し、景色のいい個室を手配させた。
もちろん、夫妻の昼食の用意を。
「杏花」
「はい」
「悪いが、大至急和装に着替えられるか?」
「もちろん!そう言うと思って、用意して来た」
「フッ、さすが」
「要の分もあるからね?」
「助かる」
何年もマークを追っていて、これまでも何度もこうしてアタックし続けている。
事前にアポイントが取れないからこそ、手立てがなくて。
この俺が、こんな卑怯な手を使ってでも取引したいと切に願う人物。
だからこそ、杏花も俺を全力でサポートしてくれる。
空いてる個室で、杏花が用意してくれた和装に着替える。
杏花は慣れた手付きで、桜色の付け下げに袖を通し、素早く帯を結び上げた。
「杏花」
「ん、お待たせ」
鏡でメイクをチェックした彼女と共に、マーク夫妻がいる個室へと。
「失礼致します」
杏花とアイコンタクトを取り、静かに襖を開ける。
襖の奥に、寛いでいるマーク夫妻がいた。