Special Edition ②
「I'm sorry for interrupt your precious off day, but…――……」
(訳:貴重なお休みをお邪魔し、大変申し訳ありません…)
俺は畳に指先を揃えて深々と頭を下げた。
自分が何者なのか、どうしてここへ来たのか。
夫妻の貴重な時間だと承知の上で、話を聞いて貰いたい旨を丁寧に伝える。
そんな俺の斜め後ろで、杏花もまた深々とお辞儀して。
「Do you like shamisen?」(訳:三味線はお好きですか?)
「Wow!! The first time I saw!」(訳:わぁ~ぉ、初めて見ました!)
杏花の手には、彼女の相棒の三味線が握られている。
高級老舗寿司屋の娘として、幼い頃から三味線を習っていた彼女。
その腕前は師範級だというから驚き。
斗賀が生後四カ月の頃に、一条のクリスマスイベントで初めて見た彼女の腕前は、本当に素晴らしくて。
それ以来、こうして俺の商談などに一役買っているのは言うまでもなく……。
日本贔屓の夫人のために、自宅から相棒を持って来てくれたことが何よりも嬉しくて。
俺は、内助の功に助けられている。
杏花は夫妻のために何曲か弾くと、夫人は俺らの行動に感動したようで、夫であるマークに『話を聞いてあげたら?』と口添えをしてくれた。
妻を溺愛しているマークは溜息を吐きつつも、やはり俺と同じで、妻には激甘のようだ。
妻の嬉しがる姿を見つめ、終始目尻を下げている。