Special Edition ②
「……え?」
着いた先は、一条が所有する高級タワーマンション。
セキュリティーも万全で地下駐車場も完備されており、もちろんコンシェルジュも常駐している。
部屋の間取りは4LDK。
しかも、セレブ仕様だから一部屋毎の広さも十分。
勤務するオフィスと一条本宅のちょうど中間地点ほどにある物件で、1年ほど前に完成したばかり。
高層階は結構な額の物件ということもあり、幾つかまだ空きがあったのだ。
暗証番号を入力すると、ピロリンッという音と共にドアロックが解除された。
硬直する沢田と本田を無理やり中に通す。
「沢田、……本田」
「……はい」
「はい」
「この物件、俺と会長からの贈り物だから」
「っ?!」
「っ……」
驚く2人をよそに、俺は杏花の肩を抱き寄せて。
「こうでもしなきゃ、いつになっても身を固める気にならないだろ」
「………」
「聡、いい加減諦めろ」
「っ……」
沢田の肩にポンと手を乗せた。
来月、本田が38歳の誕生日を迎える。
女性にとって、1年という月日は男性よりも遥かに濃密だと杏花は口にした。
前に沢田から聞いていたこと。
プロポーズ的なことを本田に言ったことがあると。
けれど、年上ということと仕事を理由に、軽く受け流されたと言っていた。
そんなこと、本心で言ってるのではないと分かっていても。
無理強いできない性格だからなのか。
見てるこっちがヤキモキしてしまう。
「最新型の家電だし、家具も殆ど備え付けだし、必要な寝具とか日用品があれば、俺宛てに請求してくれていいから」
「っ……、さすがにそれは……」
「贐代わりだから、遠慮するな」
「私からはウェディングドレスを。小夜さんからは新婚旅行を贈らせて下さいね?」
「っ……」