Special Edition ②
沢田に部屋の鍵と譲渡契約書を手渡して、マンションを後にした俺ら。
「要?」
「ん?」
「あの物件、まだ会長所有なのよね?」
「ん。……沢田が実印を押さないとな」
「……だよね」
さすがに漫画の世界みたいにポンと手渡すことなんて出来ない。
一応、全てのレールを引いた状態で手渡したに過ぎない。
あとは、あの2人が俺らの想いに応えるかどうか。
「さて、久しぶりにデートでもするか?」
「いいの?!」
「斗賀は本宅で溺愛されてるだろうから、俺は愛妻を溺愛する予定だけど?」
「っ……」
「まずは、靴でも買いに行こうか!」
「靴??」
「ちょっぴり高級な靴を、ね?」
「………??」
杏花へ不敵に微笑んで、愛車のエンジンを掛けた。
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「えっ、……ちょっと、要??」
「ん?」
「靴って言わなかった?」
「うん、言ったよ?」
「ここ、車屋さんだけど……?」
「ちょっぴり高級だって言っただろ」
「へ?!……ちょっぴりどころじゃないんだけどッ?!!」
着いたのは、自動車メーカー。
それも、高級車として有名な。
愛車を降りて、店舗へと歩き出す俺を制止するかのように足を止めた杏花。
驚きと戸惑いを滲ませた表情で俺を見上げている。
「今の車、車検が来るし、斗賀も結構大きくなったし。そろそろ買い替え時だろ」
「………」
「好きな色を選ばせてやるから、選んで」
「……色だけなの?」
「装備品見ても分からないだろ」
「……それはそうかもだけど」
車種やオプションは既に決めてある。
強いて言うなら、色と納期くらいなもので。
「ほら、店員が待ち構えてるから入るぞ」
「うぅっ……」
俺は有無を言わさず彼女の手を掴んで店内へと。