Special Edition ②

車両本体価格で900万円。
それの『F SPORT Performance仕様』にし、更に『三眼フルLEDヘッドランプ』『21インチ 専用アルミホイール』『専用本革・ウルトラスエードシート』『専用ディンプル本革ステアリング』『専用TFT液晶式メーター』等、アップグレードできるオプションは最新型をフル装備で上付けして。

杏花は終始目を見開いて硬直していたけれど。
実物がすぐに用意されてるなら、この場で一括支払いして乗って帰りたいくらいだ。

「お支払い方法は如何されますか?」
「今、送金します」
「お振込みですね?では、御振込先は、こちらになります」
「えっ、ちょっと……要?」
「ん?」
「よく考えてからにしたら?」
「よく考えて、決めたけど?」

本当はサプライズでポンと渡したかった。
だけど、今の車をプレゼントした時に、唯一『色』がお気に召さなかったようで。

だから、今回は『色』だけ本人の希望を聞こうとしたのに。
彼女の常識の価格だと、高くて400~500万くらいだろう。

けれど、一条のグループを背負って立つ俺の立場を考えて。
妻という立場上、それなりの車に乗って貰わないと困るんだよ。

心の奥で詫びながら、その場で決済し、担当営業マンから書類を受け取る。


「杏花、帰るぞ」
「………はい」

渋々といった表情の彼女の手を掴み、ディーラーを後にした。

「さてと、……どこ行く?」
「………」

……機嫌を損ねてしまったらしい。
綺麗な顔の眉間にしわが寄ってる。

その部分に指先を当て、押し広げるようにしながら。

「拗ねてる顔も可愛いけど、行きたいところ言わないと、家に帰るぞ」
「……ん、家に帰ろうっ」
「え?」
「自宅でいい。……自宅、が!…いい」

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