Special Edition ②
夏桜の手の甲と親指の付け根部分の手首に小さな鬱血痕を見つけた一輝。
どこかにぶつけて出来た鬱血なら気にしないが、ぶつけようが無い場所にできていることが気になったのだ。
夏桜には持病がある。
持病といっても治療しなければならないほど重症ではないが、その昔、闇の組織に監禁され化学兵器とも思われるような物質を作り出すよう命令されていた。
自らの体を実験台にして、それに対応できる中性剤のような物質の開発も同時に行っていたため、その時の副作用で体調を崩すことがある。
恋人の暗い過去をも全て受け止め、寄り添い支え合って生きていくと決めた一輝は、些細なことでも心配で堪らない。
「お昼ご飯作ってあるからね」
「……助かる」
「私、ちょっと買い物に行って来るね」
「え、あっ、ちょっと待って」
「ん?」
「30分待って」
「30分?」
「食べてシャワーして着替えて準備する」
「フフッ、そんな急がなくても大丈夫よ」
「買い物がてら、たまにはデートでもどう?」
「デート?……したいかも♪」
「じゃあ、30分だけ待ってて」
「ゆっくりでいいよ~、本でも読んでるから」
「おぅ」
勢いよく腰を上げた一輝は、珈琲カップをダイニングに置き、キッチンから食事が乗せられたトレイを持って来た。
「いただきまーす」
「どうぞ、召し上がれ~」
付き合い始めて半年。
一輝のマンションに住み始めて一年が経過しようとしていた。
不規則な勤務の一輝と研究員の夏桜。
同じ国家公務員でもだいぶ職種は違う。
『チームS』の招集がかからない限り、仕事での接点は殆どない。