Special Edition ②
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「夏桜、今日何時頃に仕事終わりそう?」
「う~ん、たぶん定時くらいだと思うけど、それが何?」
「迎えに行くよ」
「え?……千葉まで?」
「おぅ」
夏桜が勤務している科警研(科学警察研究所)は千葉県柏市にある。
虎ノ門ヒルズから柏市まで電車で通勤している夏桜。
結構な距離があるため、心配になる。
「無理しなくていいよ?」
「帰りにどこかで食べて帰ればいいしさ、食べたいものがあるなら予約しとくし」
「……いいの?」
「遠慮すんなよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「ん、じゃあ17時半頃な」
「ありがと」
出勤するため玄関でショートブーツを履き終えた夏桜を呼び止めた一輝。
緩くウェーブがかった長い髪を耳に掛けようとした夏桜の手をそっと掴んだ。
その行動に驚いて無意識に顔を見上げた夏桜に、触れるだけのキスを落とす。
「いってらっしゃい」
「っ……、いって来ます」
ほんの少し頬を赤らめた夏桜に手を振り、彼女を見送る。
一輝は今日、非番なのだ。
「さぁ~~て、久々にジムで汗でも掻いて来るか」
都心でも超がつくほど不動産価格が高い場所にあるセレブ仕様の高級タワーマンション。
警視総監の父親名義のマンションで、高層階にある特別仕様の物件。
マンションにはクリニックは勿論のこと、幼稚園やスーパー、サロンやカフェの他にジムやプールまで備わっている。
一輝は時間が出来ると、情報屋の蜥蜴に会ったり、趣味の乗馬やクレー射撃をしたり、体力づくりのためにジム通いをしている。