Special Edition ②



結局無理やり浴室に連れ込まれ、そのまま逃げだすことすら出来ずに成すがまま。
セレブ仕様の物件とあって、少々広めの浴槽が辛うじて夏桜の羞恥心を和らげたようにも思うが……。

「おいっ、何だよ、これ」

お互いに頭と体を洗い、浴槽に浸かったと同時に背後から体を拘束され、少し痛みを帯びるほどきつく腕を掴まれた。

「何って………注射針の痕だけど」
「そりゃあ、見れば分かるよ」

怒気を含んだ声が耳元に落とされる。
掴まれている部分がジンと熱を帯びるほど痛い。

「この前の手の甲のやつが消えたと思ったら、今度は腕に何箇所も……」

夏桜は唇をぎゅっと噛み締めて俯いた。

「俺に隠し事してんだろ」
「っ……」

夏桜の肩がビクッと跳ねる。

「定期検診って月一だったよな」
「………うん」
「じゃあ、これは何?」
「………」

伊達に刑事をしてるわけではない。
両腕に無数の注射針の痕が生々しく残っているのが気になって仕方がない。

「あのね?」
「ん」
「怒らないって、約束してくれる?」
「……内容にもよるな」

顔をグッと近づけ、夏桜の表情を読み解こうと覗き込む。

「実はね、………頼まれて新薬の開発してて」
「は?」
「だから、新薬の開発をしてるの」
「………で?」
「そのデータを数値化するのに、血液が必要で」
「あ゛?」

完全に不機嫌スイッチを押してしまったらしい。

夏桜が擦り傷を作っても心配で堪らない一輝は、再び人体実験を始めたのかと焦りまくっていた。

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