Special Edition ②

「正確には、血液成分である物質なんだけど、動物実験は既に終わっていて、人体への吸収量をデータ化するのに「待て」

どすの効いた低音が浴室内に響いた。

「その新薬を自ら服用してるってこと?」
「あ、いや、そうじゃなくて」
「じゃあ、何?」
「えっと、新薬を製造するのに必要な物質が血中に含まれる物質で、それは人によってだいぶ違うというか……私の血液、ちょっと特殊なバランスで。その昔、色んな薬品試してるから」
「……ん」
「だから、採血して、そこから必要な要素を抽出して……みたいな感じであれこれやり繰りしてる段階なの。……分かる?」
「……要するに、採血してるだけ?」
「うん、そうそう。早朝とか昼食後とか、排卵前とか排卵後とか、とにかく沢山のデータを取る為に頻繁に採血してるの」
「ホントにそれだけ?」
「……うん」

自ら薬を煽って人体実験してるのかと思って焦った一輝は、盛大な溜息を漏らした。

「マジでビビらせんなよ」
「……ごめん」

背後から夏桜の肩におでこを乗せた一輝。
心底安堵した。

「ってか、例え注射針の痕でも、俺嫌なんだけど」
「何が?」
「これ、採血してるの、夏桜じゃないだろ」
「当たり前でしょ。自分じゃ採りづらいよ」
「採血してるの、河村さん?」
「ううん、違う。先輩、医療資格持ってないし」
「じゃあ、誰?」
「製薬会社の社員の人」
「その人は資格持ってんだ?」
「うん、医師の資格持ってる」
「そいつ、男?」
「……ん、男性」

腕を掴む手に更に力が籠る。

「一輝っ……ちょっと痛いからっ」
「知るかよ」
「へ?」
「お前に印付けていいのは俺だけだから」
「っ……」

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