Special Edition ②

ぎゅっと抱き締められる体。
少し重いと思われる愛情だけれど、今までこんな風に愛を注いでくれた人がいなかった夏桜にとって、一輝の存在は大きい。

実の親でさえ、金のために娘を組織に売るような人間だ。
親の愛情でさえ注いで貰えなかった夏桜を、一輝は溢れんばかりの愛情で包み込もうとしている。

「一輝……」

夏桜の目尻から一筋の涙が伝う。
それをキスで掬い上げ、一輝は手錠を外した。

「少し赤くなってるな、ごめん」
「これくらい、大丈夫」

手首に残る赤い痕にキスを落とす。

闇の組織に監禁されていた時はもっと酷い拷問を嫌というほどされて来た。
だから、これくらいでは動じない夏桜。
一輝がこういう行動を起こしたという事には驚いたが、彼の気持ちがどういうものなのかを知ることができ、痛み以上に安心感を噛み締める。

拘束が解かれた夏桜の両腕は、一輝の首へと。

「……好き」

一輝が何をしようと、どんなことを考えようと。
彼ならずっと傍にいてくれると信じている。

「明後日の夜、空けれるか?」
「明後日?」
「ん」
「分かった、定時で上がるね」
「よろしく」

二人が初めて出会った日からちょうど一年。
あの日、雑居ビルが立ち並ぶ市街地の一角で、煙草ケースのフィルム越しにキスをしたのがついこの間のことのようだ。


どちらからともなく唇が重なる。
優しく啄むようなキスが徐々に深くなり、静かな寝室にリップ音が響くほど艶めかしさを含ませて。

舌先で割られた隙間から滑り込む熱に魘されながら、一輝からの愛を零さぬように受け止めて……。

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