Special Edition ②

「名前は考えてます?」
「う~ん、一応は考えてるけど、俺は彩葉が考えた名前がいいと思ってる」
「どうして?」
「命がけで子供を産むんだ。それくらいの権利はあって当然だろ」
「……当然か」
「うちの母親は最近どうだ?あーだこーだ騒いでないか?」
「フフッ、……お義母様?」
「その顔だと、また騒いでんだな」

あの記者会見の後、彩葉の妊娠を知らされた俺は、酒井が手配した医療スタッフにすぐさま指示を出した。
――と同時に、両親に報告した上で、彩葉が勤務する病院と財前家で連携し最高の医療チームを手配して貰えるようにした。

当然のことながら、母親の喜びようは凄まじく。
その夜から尋常じゃないくらい連絡が来る。

性別も確定してない頃からベビー服は勿論のこと、俺の家なのに子供部屋をリノベーションする設計図を勝手に手配したり。
胎教にいいからと、家庭教師ならぬ胎教教師?の人を勝手に送り込んで来たり。
お腹の子にいいからと、隣りで本の読み聞かせやクラシック音楽の生演奏を聴いた方がいいからと、リビングにピアノを搬入してそれを弾かせたり。
空気のいい所でのんびりと過ごす方がいいからと、わざわざ別荘を幾つか買ったようで、気分転換に週替わりで使うといいと言い出す始末。
無鉄砲で破天荒すぎる性格は、妊娠を機にますますパワーアップした気がする。

「昨日はね、予定日が近づいて来たから、厳選したベビーシッターの写真みたいなのを持って来たよ。お見合い写真みたいなやつで、ちょっと驚いたけど」
「あぁ~マジか……。無視してくれ、俺からも言っとくから」
「別にいいのに……、心配してくれるのは有り難いもの」

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