Special Edition ②



「ただいま戻りました~」
「お帰りなさいませ」
「これ、彩葉用に」
「分かりました。お預かり致します」

散歩の途中で購入したさくらんぼとびわが入った袋を桜井に手渡す。

「シャワーを浴びるようなので、後をお願いします」
「承知しました」

郁はリビングで再び仕事を始めた。
そんな郁の元に小走り気味に駆け寄って来る彩葉。

「郁さんっ!!」
「おいっ、危ないだろっ!」
「触って触ってっ!!」
「………ぁっ、……フフッ、凄いな」
「散歩してる時は大人しかったのに、家に着いた途端に暴れ出すって、郁さん似かも」
「何で俺なんだよ」
「だって、家にいるより会社にいる時間の方が長いじゃない」
「それ言うなら、彩葉もだろ。今は家にいるけど、妊娠前は病院に八割いただろ」
「………」
「………」
「フフフッ」
「俺らの子だな」
「そうみたいね」

どちらかともなく笑みが零れる。
もしかしなくても、家に寄り付かない子に育ちそうで……。
操縦士と医師の子。
どちらに似ても将来有望そうだ。



夕食はフライトで行った愛媛で購入したいよかんそうめんを頂き、デザートは散歩の途中で買ったびわを。

「このびわ、甘くて美味しいね」
「時期ものだから、また買って来てやるよ」
「ホント?」
「ん」

冷えたびわを目の前で剥いてくれる姿を見つめ、うっとりと見惚れていると。

「彩葉」
「ん?」
「結婚式だけど……」
「………うん」

妊娠が発覚し、切迫流産の危機に瀕したこともあり、六月十一日に予定していた挙式を延期した二人。
本来なら、今週末がその結婚式のはずだった。

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